365日をJ棟で

サラリーマンの諸々日記。買い物、音楽、日常。

日記ちゃん。旅の終わりと始まり。(2023/3/3)

ジェイコブ・コリアーの"Djesse Vol.4"がリリースされた。

2018年より始まったDjesse(ジェシー)4部作の最終章。2019年にVol.2が、2021年にVol.3が、そして2024年に今作Vol.4が世に解き放たれた。

Vol.1はメトロポール・オルケストをフィーチャーした壮大なサウンドを、ジェイコブ本人が慣れ親しんだジャンルの音楽と共に。物語の始まりであり本人のシグネチャー的サウンドがふんだんに詰め込まれた"With the Love in My Heart"と、世界最高のアカペラグループTake 6を贅沢に使い込んだライオネル・リッチーの大ヒット曲"All Night Long"は必聴。

Vol.2はアコースティックなタッチ、気張らず聴けるも雄大な楽曲たち。なんといっても数百ものトラックを声だけで敷き詰めたアカペラの"Moon River"、そして鈴が鳴るようなギターとdodieの幻想的な歌声が美しいビートルズの"Here Comes The Sun"は是非ともデカい音で。

Vol.3は一転してエレクトリカル、本人が「内なる世界、電子の嵐、風邪の時に見る夢」とも説明するような目まぐるしさと妙なサイケさ。ダニエル・シーザーやトリー・ケリーなどポップミュージックの最先端を率いるアーティストをフィーチャーしたカジュアルな楽曲が多いこともあり、最も人気を博したアルバムなのでは。キャッチーで素直に良い曲だと感じる"All I Need"や、ライブでのシンガロングに適した(?)大団円の"Sleeping On My Dreams"はDjesse全シリーズを通してもトップクラスに好き。

 

Vol.4は、Vol.2,3のポップさにVol.1の空間的な広がりを足した上で、本人曰く「世界そのものを音楽とする」ためにはどうするか?というアイデアが結実したアルバム。

ジョン・レジェンド、トリー・ケリー、イエバの三傑をフィーチャーしたサイモン&ガーファンクルの"Bridge Over Troubled Water"、近ごろ勢いがヤバい韓国のaespaにColdplayのクリス・マーティンを共演させたK-POP+ラップ+ゴスペル+フューチャーベースな"Over You"、カーク・フランクリン御一行のゴスペルに南ア出身ラッパーであるショー・マジョジの凄まじいフローを足し算した"Box Of Stars Pt.1"など、よりスタイルや国籍を問わない、雑な表現をするなら「なんでもあり!」な世界観を心地よい、ノリノリの音楽でまとめ上げている。

"Box Of Stars"ではVol.1の"Overture"の旋律が繰り返し登場し、バックがアフリカのリズムに変化することで今まで「なんとなくクラシックっぽい」と思っていた箇所が途端にアフリカっぽい旋律に聴こえてくるのだから不思議。「僕らが思っているよりか世界は一つだよ、ほら」ということを聴覚を使って直接伝えられたような手触りがして、うわーっ!と鳥肌が立った。(最初期作の"Don't You Worry 'Bout A Thing"のベースが少しだけ登場する部分で何故か涙が出てきた)

 

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また「世界そのものを音楽とする」きっかけでもあった、全世界をツアーする中でジェイコブが聴衆との交流で生み出したコーラス、実に10万を超える人々の声からサンプリングしたサウンドがほぼ全楽曲に散りばめられている。1曲目の"100,000 Voices"からいきなり圧倒される程の音圧。

私も2022年11月の大阪公演(奇跡的に最前列を取れた)に行き、ジェイコブと束の間の交流を果たした身。0.1ミクロンぐらいでも、このVol.4にも自分の声が入っているかもしれない。ライブ盤だと可能性はあっても、スタジオ盤に自分の声が乗るのは不思議な感覚。


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ロンドンの小さな部屋から1人の少年が生み出した音楽が、ポップミュージックの世界を根本からひっくり返した。ボーカル、ピアノ、ギター、ベース、打楽器からレコーディングにミックスまで、なんでも出来るアーティストとしてデビュー作の"In My Room"を作り上げた孤高の鬼才が、"Djesse"シリーズで世界中のミュージシャン達と共に作品を作り上げ、そして最後は世界中のファン達の声(まさに"100,000 Voices")に行き着いた。まるで一編の物語を読んでいるかのような6年間だった。Vol.4、そしてDjesseのラストを飾る"World O World"は、聖堂にいるかのようなクワイアのみで構成され、美しきトライアド(ドミソ)と共にこう閉じる。

また会う時まで

さようなら さようなら

長年に渡る超大作のエンドロールを眺めた後の気分。寂しくもあり、充実感もあり。このスペクタクルを自分で咀嚼し切れていない興奮もあり。ジェイコブ・コリアーの音楽制作はまだまだ続くが、Djesseシリーズは一旦ここでお終い。

Vol.1の衝撃から6年間、大学生活を終えたり、働き始めたり、妻と出会ったり、休職したり、結婚したり、色んな体験をしたり。人生のフェーズでもかなり密度の高い時間だった分、このシリーズが残す影響もとてつもなく大きく、それゆえ終わってしまうことにしんみりしてしまう。

それでも人生は続いてゆく。ジェイコブ君だってリリースに際し「Djesseは終わり、また果てしない旅が始まる」と述べている。まだまだ生き抜いていこうよ。

 

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