J.M.Weston(ウエストン)の310を購入した。今回は中古で。
ウエストンの入り口は641(ゴルフ)で、新卒だった年に直営店に向かい震える手で決済した。そんな641は今も気に入っているが、その後598(ハーフハント)とか310(セミブローグ)とか690(ヨット)とか、カッコいいモデルいっぱいあるやんけ!と気付いたことで若干の悔いを残してもいた。
その中で外羽根スプリットトゥダービーの598は昨年、コーヒー色のモデルを格安で買えた。あまりにも返りが悪いので全然履いてないけど。690はなんやかんや641で代用効くから良いかなと。
残る310は、310はな…数年前に廃盤なったんや。ショックや。641を買った時はまだ現役やってん。その頃は内羽根セミブローグとかこの世で最後に買うもんや思うててん。スーツはストレートチップが最高やしな。穴飾りのある靴なんて要らんやろと。
その後、 Takayuki Hashimotoの橋本さんが手掛けるLEVERからVESTIGEというセミブローグのモデルが出て、それをWolf & Wolffの石崎さんが橋本さんとの対談でレビューしたりインスタに履きシワが入った写真を載せていたことや、レショップの金子恵治さんが"内羽根党"と称してレユッカスやジャコメッティを私服姿で履いているのを見て、穴飾りの入った靴にシャピーンと目覚めた。さらに知人のブログを読んだりしているうちに、チョロくも310が最高の靴に見えてきた。
穴だらけである。
しかし310はもう、ウエストンのラインアップにいない。ストレートチップの300は永世定番として今も生産され続けている。だが復刻でもしない限り、310を新品で買うことはできない。
中古で買うにも、例えばメルカリでサイズ・状態・価格を踏まえると納得感のある出品は稀。なにより実物が見れないし、そのことでクロケのセミブローグを買って大失敗したことがある。ちなみにメルカリに出ている45万円の未使用310、アレどういう意味なんだろう。エドワードグリーンのトップドロワーみたいなエグ品質なのか?
旧ロゴ。私の641と同じ。インソールの変色も無いほどに綺麗。
今回の出会いは、とある靴磨き屋さん。シューケア・シューシャインの普及に熱心に取り組む一方で、中古の靴販売も店頭とWebで行っている。先日、久しぶりにWebショップを覗くとウエストンの300と310が出品されていた。どちらもサイズは7で、写真と説明を見る限り数回しか履かれていないであろう良コンディションだった。
気づいた頃には店頭磨きの予約を入れ、お店に足を運んでいた。持ち込んだのはリーガルの01DRCD。もう買ってから6年近くになる、私のオンでの相棒。5年以上ぶりに靴磨きを生業としている方にお願いして磨いてもらった。磨いてもらう傍ら、お目当ての300と310を眺めて試着して悩んだ。そして買った。
サイズは7E。B品を表すFスタンプ付き。
まさかこの状態の310を、ゆっくり現物を確認しながら手にできるとは思っていなかった。製造年月はシリアル頭の"2"から2012年かな?
インソールの馴染みは僅かにあるが、ソールはほぼ残っていて、おそらくは室内履き慣らしがメイン、外で一日は履いたかな?というレベル。2018年製の300は履きシワもほぼ無い極美品で、なんらかの事由で履けないまま手放したのかなぁと。私も641は室内で数日間は馴染ませたし、それでも外出初日は両足が張り裂けたので、手放してしまう気持ちは分からなくもない。
ところで靴の内側には検品落ちした証とされる"F"スタンプが入っているので、アウトレットか何かに流れたのだろうか。店主さんとジロジロ眺め回したが、キズ、トラ、ブローグのズレや裂け、その他の瑕疵は見分けられなかった。それより俺のバキバキのシワが入った598の方がよっぽどFスタンプに相応しいと思うんだけど。まぁ、気付けば追記します。
返りが付かないうちに外を歩くとトゥがゴリゴリ削れる。これもその事例だと思う。
310はショートノーズかつセミスクェアみたいなカクっと落ちるトゥで、598同様さりげなさが好み。これ以上にチゼルってたりノーズが長くなってたりすると、個人的には少し厳しい。
全体的に小さめのサイズ感で、手持ちのウエストンというか革靴の中で最もコンパクトな見た目。598の重戦車みたいなソールの厚さや硬さはないので、それなりに歩きやすい部類なのかなと思っている。 310で採用の11ラストはキツいという評判を見かけるが、確かに641や598と比べるとミッチリ感は強い。浮腫んだ夜だと右足の指が窮屈だが、果たして今後どうなるか。
310はスーツにも合わせるが、やっぱり私服の想定。太いオリーブのワークパンツ、ベージュやネイビーのチノはもちろん、このぐらいショートノーズならジーンズも余裕。そういや上述したVESTIGEの対談(現在はもう見れない)で、石崎さんの「ジーンズとの合わせを考えている」発言に橋本さんが嬉しいと返していたのが印象に残っている。
少し太めの履きシワは入っているが、このぐらいなら個人的に許容範囲かな。
例に漏れず、革はデュプイのボックスカーフだと思われる。革質が抜群に良いのは641で実感済み。
色んなウエストンを磨いた経験のある店主さんは、ここ数年でウエストンは革質が変わり顔料っぽい印象を抱くと言っていた。パッと見で2012年製の310と、2018年製の641に大差は感じられない。たまにネットで30年近く前のエドワードグリーンやウエストンの極美品の写真を見かけることがあって、それは確かにエグいなと思うことがあるけれど。
左から310 7E, 598 7D, 641 7C。
ところで、この310はシューツリーが付属していた。しかもニス塗りでロゴプレート付きの旧モデル。実質15,000円ぐらい引きである。嬉しい、楽しい、安い。いや、安くはない。先日の土屋鞄に続いて、思いっきり予定外の散財である。
しかし先述の通り310はディスコンになって久しいし、今後も本国でのオーダー含めて再度買えるチャンスは未定。どうしても、この出会いを流すわけにはいかなかった。買わなかった後悔より買う後悔、その一言を胸に今日もカードの引き落とし額を見て血の気を引かせてゆけ。オ〜。
お願いしていた01DRCDもピカピカに。ありがとうございました!