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サラリーマンの諸々日記。買い物、音楽、日常。

TOMOO "TWO MOON" Live Tour 2023-2024@フェスティバルホール大阪

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少し時間は経ったけれど、新年一発目のライブはTOMOOでした。ともお。

一昨年、出張先の山形で線状降水帯に襲われ、あり得ない豪雨に打たれながらタクシーで飛び込んだコンビニ。夕飯を買いつつ、有線で掛かっていたメジャー1stシングルの"オセロ"に出会った。

 

いわゆるドゥービー・ブラザーズの"What A Fool Believes"構文の亜種…と勝手に呼んでいる、特定のコードを軽快なリズムで行き来するビートに、男女どちらとも言えない中性的なミドルボイス。

豪雨のせいで、いっそう音が際立つ店内。その場でShazamするほどの一聴き惚れだった。(コンビニの中ではMrs.GREEN APPLEの大森さんやOfficial髭男ismの藤原さんのような、ハイトーンが得意な男性歌手だと勘違いしていた)

 

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その少し後、心斎橋JANUSにおけるTOMOO/ステレオガール/Cody・Lee(李)の合同イベントで目撃してから一層ファンとなり、新旧曲を追い続けていた。(関係ないが、この日のステレオガールは衝撃的だった)

そして昨年下期、満を辞した1stフルアルバムの"TWO MOON"がリリース。

正直なところ、今年は新譜をほとんど追わなくなり、好きな曲だけをグルグルとリピートする日々。我ながら保守的なフェーズに入ってしもうたなと思っていたが、10月以降にその傾向がより顕著となってしまった。このアルバムばかり聴いていたから。

 

"槍出せ角出せはいらない 丸いままつらぬいて"

楽曲のアイデアはあるんだけど、脳内の景色を描くようなサウンドプロダクションが出来ない…という歯痒さを解消するうえで、メジャーデビューはとても大きな意味があるのではないかと思う。業界のことは何も知らないけれど、予算とかスタジオとかプロデューサーとかバックミュージシャンとか…

メジャーデビュー以降の楽曲は、どれも充実度とリッチ感がインディーズ時代と比べて桁違いに良く聴こえる。特にオープナーの"Super Ball"は小西遼(象眠舎, CRCK/LCKS etc.)をプロデュースに迎え、錚々たるメンバーのホーンセクションとストリングスをフルパワーで掻き鳴らしつつ、自身の素直な気持ちを真っ直ぐに表した(とMCで語っていた)ウルトラ・ポップなナンバー。

私としては星野源の"アイデア"やジェイコブ・コリアーの"With the Love in My Heart"を聴いた時の衝撃に近い。これまでアーティストが描き続けてきたサウンドの集大成、第一章のハイライトであり第二章の幕開けを告げる予告編でもある、巨大な音楽建築。とてもヤバい曲。気に入ったとかのレベルじゃなくて、なんかもう文句なしのオープナーをぶつけられると即名盤認定しちゃうよな。

 

高木祥太(BREIMEN)をプロデューサーに迎えた"Cinderella"。2サビ「変われないままの私を許してさ」のIV→V/IVは私の大好物。先述の"Super Ball"も同じ進行が登場する。

コンサートにおけるTOMOOは、ステージ上を踊り回りながら歌うスタイル、電子ピアノで弾き語るバンドスタイル、グランドピアノで独唱(orバンド演奏)するスタイル、それぞれバランス良く配置され、耳も目も飽きが来ない2時間だった。

楽曲はCD音源がベースで、極端なアレンジはされずに尺通りに進むのがほとんど。尻上がりな曲調が多い割に、TENDREやカネコアヤノのようにオープンな小節を設けてバンドメンバーにソロを取らせる機会は少なく、大サビやアウトロのボルテージが上がってきたタイミングで曲がスパッと切れてしまうので「もっと頼む!」と惜しく思う場面も多かった。

いや、ある意味それもポップシンガー・TOMOOのスタイルなのかも。なんでも器用にやる必要はないし、インプロ中心で演出を過剰にしなくたっていい。良いメロディーでさえあれば飽きずに何度でも聴ける、メロディーメイカーってそういうもんじゃん。

 

(TOMOOの歌は菊地成孔の箸の手を止めるだろうか?)

終演後は友人と立ち食い寿司をつまみつつ、あの曲が好きだ、最近はTWO MOONしか聴いていない、ほんまそれ、みたいな与太話をしていた。

その中で、TOMOOのJ-POPにおける最終的な立ち位置はどこになるだろう?と尋ねた。友人はaikoかな、アンジェラ・アキを感じる部分もあったなと回答した。奇遇やな、私も全く同じ感想だった。

ピアノの弾き語りというイメージが先行するのか、ギター片手のあいみょんや声量で圧倒する越智志帆(Superfly)ではないよなとか、色々考えた結果として着地するaiko。アンジェラ・アキの雰囲気は完全にTWO MOON収録の"窓"に引っ張られていると思う。

スタイルといえば。"Grapefruit Moon"のブリッジ部(這って 這って〜)や"Cinderella"のサビ(君はもう誰かに出会って 新しいコートが似合ってるよ)で聴ける地声とファルセットを上下に行き来する歌唱スタイルは、原雅明さんの著者"Jazz Thing ジャズという何か"で紹介されていた、かつてはある種の音楽における素っ頓狂なリズムと音程の跳躍を「ファンキー」と形容していた…みたいな一節(記憶違いならメンゴ)を思い出した。ヒョコヒョコ跳ねたりウネウネ捩らせたり、フリースタイルなダンスも照らし合わせるとTOMOOは紛れもないファンクアーティストと呼べるが、はてさて…え?なんの話これ?

 

しかしEarth, Wind & Fireに対するTower Of Power、THE BEATLESに対するTHE BEACH BOYS、マイケル・ジャクソンに対するプリンス、ももいろクローバー(Z)に対する東京女子流のように、サザンオールスターズに対するスターダスト★レビューというポジショニングがあるように感じている。(適切な並びかはさておき、あくまでも個人的な印象です)

あとはどうだろう、スターダスト★レビューの感想でも述べたことだけど、TOMOOという名前が"お茶の間レベル"まで届くだろうかというところ。

昨夜放送の関ジャムでも、いしわたり淳治さんが"Super Ball"を1位、蔦谷好位置さんが"Grapefruit Moon"を2位として2023年のベスト楽曲に選出している。関ジャムを観るような「それなりに音楽好き」の層には十分リーチしていそう。

今後は大型フェスや地上波に出るだろうし、タイアップ次第では紅白にも出れるポテンシャルを感じる。ネクスト○○というのは多方面に失礼な響きで好かないが、音楽性ではなく世間への浸透度の面で、TOMOOがaikoのように世代を代表するアーティストになるんじゃないかと、どこかで期待している自分がいる。

なんて妄想はさておき。2024年もTOMOOは唯一無二の声でもって、数多の人を魅了するんだろうなと思ったコンサートでした。ゴーゴーレッツゴー!