終着点、と呼べるほどシャツを経由したわけではないけれど、やはり袖を通さずにはいられない存在。コムデギャルソンシャツ フォーエバー。
コットンブロードのシャツ、というジャンルでサンプリングされた回数は数え切れないであろう「ザ」の位置付けにあるシャツ。今どきなリラックスシルエットのシャツは、大体がフォーエバー（あるいは90年代のギャルソンオム）をイメージソースの一つにしているのではないかと、ソースもなく邪推ばかりしている。
なぜかヤフオクで格安落札できた個体。もう手元には無い。
ワイドクラシック、ナロークラシック、スモールボタンダウン、ベリーナローの主たる4型があり、無地ブロードやオックス、ストライプやギンガムチェック、クレイジーパターン等バリエーションは多い。私も過去にはナローのストライプシャツを所持していたことがある。シャラシャラとした絹のような天然の冷感接触を持っており、一目に美しいと呼ぶほかない感動的な生地であった。
「ザ」である故、質（生地や縫製）も価格もフォーエバーを超えることを暗黙で御法度にしているブランドが多いように思うし、それこそコモリやグラフペーパーは良いポジションに落ち着いていると思う…が、最近は主に価格面でフォーエバーより高いカジュアルシャツが増えた。それらはフォーエバーと異なる仕様だし、それなりに売れているようだけれど。
型番: FZ-B301
それはそうとして、というかブロード云々と言っておきながら、今回はウールシャツを購入した。コットンシャツはサンリミットが4枚ある時点で大渋滞（もといクラッシュ）を起こしており、ここにフォーエバーが入るともう終わり。主に財政面での破滅には向かいたくないし、コットンとはテイストが違っていて、一枚も所持していないウールシャツが欲しかった。
購入品はワイドクラシックで、ブラックのLサイズ。コットン版のセールぐらいの価格で買えたのはラッキーだった。素材を問わず、二次流通で見かけるフォーエバーは圧倒的にXSかSが多く、L以上は状態の如何に関わらず売れるスピードが速い。なので、下手に出品を待つよりも海外ECで新品を買う方が早い／安い／美味い。
凛。
どこから見てもプレーンな出立ちで、パッと見ではギャルソンだと気付かれることもなかろう。カジュアルシャツをドレスのラインで縫いました、みたいなドヤオーラもない。ステッチは目一杯に細かく縫われており、整い方そのものが一種のデザインとして機能している。キレイ。
シャツの構造には全く明るくないけれど、こうすれば色気が出る、ここをカーブさせて着心地を確保する、という要素を排してスパーンと日本刀で切ったような断面をしている。最小限の動きで最大限の効果を発揮する、居合の達人的な。
合わせて定価8万円。もう戻れないところまで来ている。
並べるとよく分かるけれど、サンリミットとの共通項も多い。襟の形はそっくり。カフスボタンは1つで、ガントレットボタンが無いところや、袖のデザイン（3枚袖）も同じ。大きな違いとしては、サンリミットの方が着丈が数センチ短いこと、それに伴いフロントボタンも1つ少ないこと。厳密には、サイズ表を読み取る限りではフォーエバーのS≒サンリミットの1であるため、単純な比較としては不適切かも。
サンリミットの門田さんがフォーエバーに携わっていたかは知らないけれど、独立の際にパターンを大幅には変えなかったということは、このデザインにレギュラーカラーシャツとしての完成系を見ているということなのかしら。ちなみに影響を受けていそうなコモリのポプリンシャツと並べてみると、全くと言って良いほど似ていなかった。襟型も各所の縫い方も、ボタンも何もかも。
177cm,69kgでLサイズ。袖が短いという話をよく見るけれど、腕が短い種族の私にとっては…
コットンと違って光による白飛びも少なく、良くも悪くも近寄りがたい雰囲気のあるブラック。柔和なオーラで攻めたいなら、ライトグレーかチャコールを選ぶべし。
ウールでシャツとなると選択肢はあまり多くなく、スイングトップやコーチジャケット等のライトアウター寄りのアイテムが定番。ブリンブリンにドレープするウールは、いつもの大好きなシャツなのになんだか違う独特の感覚があり、慣れない身にはとっても新鮮。洗濯等の取り扱いに関しては、また書けたら書きます。
そして誰もが思うであろう、ボトムスどうしたら良いんだ問題。普通のコットンパンツではゴールド負けしてしまうほど圧のある素材感。セットアップで穿けるズボンはギャルソンシャツからは出ていないので、自分で調達する必要がある。みんなどこで買うのだろう。小心者だからズボンの色を大胆に変える、みたいなこと出来ないのよね。そうして上下黒の陰気なアラサーが生まれるってワケ。
一生物なんてのは存在しないと常々思い続けているが、良い物を手にした時、そこから汲み取る情報は自分の中で蓄積される。ブラッシュアップされてゆく選定基準だけが一生物であり、そこに大枚を叩く価値を見出せるかどうか。「永遠」と名付けられたシャツ、まだ手にしたばかりではあるけれど、色んなことを教えてもらえそうな気がする。
早速着ようにも、昼間は暑くてなかなか叶いませんな。しばらくは体温調節用のカーディガン代わりだろうか。
ウールシャツの購入にあたっては、こちらのnoteを参考にしました。
言わずと知れた…のサイト。サンリミットやフランネルソルはこちらで知って買いました。
ワイドクラシックのサイズ感はpublicさんが分かりやすい。スタッフの方と身長体重がほぼ同じなので有難い。
