今年も音楽を聴いた。
Apple MusicとSpotify恒例、聴いた音楽の集計が賑わう季節。印象としては、海外の曲をあまり聴かなかったような。あと現代ジャズを全く追いかけられなくなった。今どのアーティストが熱いのだろうか。
前日に同じ会場でkaneko ayanoのワンマンだったので素通りしたコンサート、めちゃくちゃ良くて後悔している…
今年のトップアーティストは昨年同様にTOMOO。
昨年終盤にリリースされた"TWO MOON"は、今年も継続して輝いていた。1月にホールツアー、4月に象眠舎を観に行き、先月も大阪で開催されたMTV+ Unplugged公演の上映会を映画館で観た。来春の武道館公演もファンクラブ会員の友人経由でチケットを取ってもらった。
Mステ出演+地上波ドラマの主題歌など、TOMOOをフックアップ!な一年だったなと思うも、NHKの紅白歌合戦には選出されず。選出されたOmoinotakeのように、YouTubeで数千万再生されるようなスマッシュヒットが必要かしら。
ところで"TWO MOON"は2023年のアルバムなので、以下は2024年リリースで好きだったアルバム。ベストアルバムだなんて、そんな大層な。音楽は好きだけども、私なんかより数段階も深く広く聴いている人がごまんといる手前で「そんなこと、よう言わん」状態。
1. Open Today / 倉地久美夫
年間を通して聴いていたというより、先日サブスクが解禁されてから取り憑かれたようにリピートしている。
福岡在住・SSWの倉地久美夫さん、恥ずかしながら名前すら知らなかったが、SNSで飛び込んできた「傑作」の二文字に食いついた。ほぼ全編が倉地さん独りによる多重録音で、マルチミュージシャンとしての一面を強調した一枚(らしい)。
不意を突く旋律やリズム展開、深夜に見る夢の内容を書き写したような詩、その中に差し込まれるギラッと美しく光る歌唱&ギターにノックアウトされた。
衝撃的だったのが、弾き語りと完全にシンクロしている、不規則に加減速するビートの揺らぎ。Jディラ以降の人力でレイドバックするスタイルとはまた違う印象で極めて心地よい。「モタり」「走り」では表せない、人の呼吸であったり、寄せては返す波であったり、自然の揺れに近い。
タテは常に揃っているわけではなく寧ろ積極的に(?)ズレているのに、全パートとも出音のスピード(パルス)が意図通りに揃えられるというソロ多重録音の性質が活かされている。歌とバックトラックが噛み合わない演奏における居心地の悪さ、みたいなのが一切ない。(個人的にceroはこのパルスが意図的か何なのか揃っていないと感じる瞬間が多く、結局"e o"もあまり気持ち良く聴けずにいる)
レコードショップにて「日本の伝承や祝祭」と紹介されている点も併せて、台所に立つ祖母の鼻歌、幼少期の怖い夢、しつこいほど流れていたローカルCMのBGM、ズレまくりだが不快感はない祭り囃子、遠鳴りする暴走族のコール、経験したかも曖昧な記憶の断片をぼんやりパッチワークにしながら聴いている。チューナー/メトロノーム/音楽理論を必要としない土着の旋律、そこに極厚のハーモニーと独特すぎるストーリーが付された強烈な音楽作品…そんな感じ。なにそれ?
"心震える時 / 長谷川きよし"や"平成 / 折坂悠太"を初めて再生したときの、音楽的嗜好の地盤を揺るがすほどのパンチを"Open Today"で喰らえた。傑作、快作、怪作。(1曲目で振り落とされそうでも、どうか堪えて2曲目以降に進んでほしい)
2. Your Favorite Things / 柴田聡子
ジャケ写も可愛い。
よく聴いたアーティストはTOMOOだが、よく聴いたアルバムはぶっちぎりで"Your Favorite Things"だった。
柴田聡子さんは2019年の"がんばれ!メロディー"で耳にしていたものの、あまりハマりきれず"ぼちぼち銀河"を含めて半ば素通りしていた。今作は全曲がNo.1ソングに挙げたくなるほど、出だしから好みが詰まりに詰まっていた。(改めて聴いた先述の2枚もめちゃくちゃ良かった)
サウンド、声質、歌詞、手触りが10曲で統一されているので、丸っと通しで聴くのに最高のアルバムは間違いなくコレ。
"へそまげるうれしい日 つぼみ咲くかなしい日 変じゃなかった日はなかった"
特に好きなトラックは"Movie Light" "Synergy" "白い椅子" "Side Step" "Reebok"…というか、全部好きなんやけどもね。"Reebok"は解釈が異なる可能性もあるが、とても「救われる」曲だと感じる。私はメンタルをヤったとき、底から掬い上げてくれたのは"無責任感 / バーバパパ"と"ゆらゆら / YeYe"の2曲だった。今だったらこの曲だな、と思う。
岡田拓郎さんをプロデュースに迎えたことにより柴田聡子さん本来のフォーク的な要素が失われたことの賛否は見かけたけれど、個人的には前作までをマトモに通ってこなかったうえ、サウンドが非常に好みのド真ん中だったので気にしていない。(同氏プロデュースの"Love Deluxe / 優河"も同じ感想)
リリースから間もなく、森道市場でバンドセットを聴けたのも良かったな。10月、友人の結婚式のため博多に行った際に近場で中村佳穂さんも出るソロライブが無料であったんだけど、式の時間と丸かぶりで行けず。参加した妻曰く、めちゃ良かったそう。
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以下、よく聴いたアルバムが続きます。キリよくベスト10枚とか選べなくなってきたな、冒頭にも書いたけどそんな枚数聴いてないし。ほんでもって、どうしたって1位と10位は同列に扱えなくない? 熱狂度的には上述の2枚が突き抜けてトップかな。
・呪文 / 折坂悠太
・On the shore / 踊ってばかりの国
・Dos Atmos / Dos Monos
・Love Deluxe / 優河
・魔法学校 / 長谷川白紙
・Djesse Vol.4 / Jacob Collier
・COWBOY CARTER / Beyoncé
・The Alexander Technique / Rex Orange County
・Where we've been, Where we go from here / Friko