COMME des GARÇONS HOMME 03AW
コムデギャルソンオムの縮絨ウールセットアップを購入した。
AD2003、タグから見るに03AW。長らくオムのデザイナーを担当していた田中啓一さんが退社する前、いわゆる「田中オム」最終期のシーズンとされている。この後、オムのデザイン担当は渡辺淳弥さんに引き継がれていくのだとかなんとか。
黒バックに金字ロゴ(軽衣料は銀バックに白字)が田中期の特徴。地味ながら好き。
何度か触れていることだが、私は田中期に含まれるAD1996のウールギャバセットアップ(ジャケットは売却済)を所有している。当時はコムデギャルソンというブランドを覚えたての頃で、とにかく一度は手にしてみたいという憧れだけで買ったものだった。
ここ数年、田中オムは転売気質のバイヤーが買い集めている影響か古着価格が高騰している。私のようにリサイクルショップ(≠古着屋)で何の気無しに買えていた頃に比べると、相場は大きく跳ね上がっているのではないだろうか。私のAD1996も当時は上下で6,000円だったが、今ならパンツ単品でも(もちろん手放さないが)28,000円で売り切る自信がある。
それゆえ、今回のセットアップも(私比では)高かった。ただし、後述するようにワンオーナー品であること、また状態が頗る良いこともあり、納得感のある買い物となった。
ダワダワに歪んだラペル、品質タグも当然デロデロに。多分ボタンだけは後付け。
生地に熱と圧と化学変性を加える縮絨加工について、以前より興味はあった。詳細やメカニズムについてはプロに譲るとして、生地段階で縮絨を加えて(フランネル、メルトン化して)から縫い合わせる通常の衣類と異なり、縫い上げた衣類に縮絨をかけるのが特徴。生地同士+ステッチの縮率の違いから、衣類全体が溶けたようにグデる。
物によっては裏地が表に飛び出してくるほど縮むようだが、今回のジャケットは裏地無しのため見た目だけで言えばマイルドな方か。
生地の手触りはなかなか説明しづらいが、均一な面が無く、どこを撫でてもゴツゴツしており不思議な風合い。一見するとシワシワなようで、生地が丸まった部分とそうでない部分との間に出来た凹凸によって光の陰影が現れているような感じ。まぁ、どちらにせよアイロンかけなさい!と怒られるタイプの衣類ではある。
縫い合わせ箇所の多いフラップポケットはもちろん、パンツのポケットも例外なくグデる。
ジャケットのような衣類をカジュアル化するなら、素材をジャージー風にしたり、アンコン仕立てにしたり、パッチポケットにしたり、メタルボタンにしたり、色々な手立てがある。
そのどこにも属さない縮絨加工、今回のジャケットも普通のテーラードとして仕事に着ていけそうなほど、仕立て自体は生真面目。ブリンブリンに歪んだ表情が加わることで一気にカジュアルに振れる、そのバランスがとても面白くて好き。またフェルト化されるほどギュギュッと詰まっているので、着るとめちゃくちゃ暖かい。
ちなみに今季もオムでは縮絨ウールサージで半テーラード、半コーチジャケットのようなセットアップがリリースされており、とても欲しかったが気付いた頃には売り切れていた。ので、古着を漁っていたのである。
どう着たって最高なのである。(けんた食堂)
3つボタンによる古ぼったさはあるものの、Y2Kが流行りの今ならば特に違和感はないか。そもそもラペルの折り目が曖昧なため、段返り3つボタンと考えても良い、むしろそう着るべきかもしれない。
もっと言うと、襟を立ててラペルを交差させ、襟裏の隠しボタンをフラワーホールに通すことでマオカラー風のブルゾンとして着ることも出来る。「仕事用のスーツを乾燥機に入れてしまいました」状態から怪しい文化人への行き来、これまた不思議で面白い。
縮絨の影響か、ややサイズ感はコンパクト。前述したようにこのアイテムはワンオーナー品で、ジャケットはS、パンツはMとあえてサイズ違いで購入したとの説明があった。確かにジャケットはジャストより僅かに緩めながら、パンツはウエストがピタッと吸い付くほどシンデレラフィット。ひょっとしたらLでも大丈夫かも。なかなか通販でジャケパンを買うのは勇気があることだが、今回は良いところを突けた気がする。
またどうも判別が付きづらいが、凝視すると生地は限りなく黒に近い濃紺のように見える。(出品者は黒と記載していた)
この超ダークトーンに幅の異なるベージュ?ゴールド?の細ストライプが入っている。こうしたチョークストライプといえば↓の鈴木大器さんが個人的に印象に残っていて、加齢と共にどんどん似合ってくる柄だよなぁと。私も30代に突入したわけで、このたび挑戦権を獲得した次第です。あと鈴木さんも若い頃はギャルソン一辺倒だった時期があるらしく、要はそういうこと(?)
早速着まして。
というわけでおそらく今年最後の買い物。今まではサンリミットばかり選んでいたが、今年はフォーエバーのウールシャツ、オムプリュスのワークパンツと、親元であるコムデギャルソンに惹かれ始めた一年だったかもしれない。
ギャルソンは長持ちする、なんてポストが先日Xで回ってきたりして、真偽はさておき今回のセットアップも20年間くたばることなく生き続けて私の手元にやってきたのである。AD1996のパンツも27歳ぐらいだけど、お尻周りのテカリ、内側の糸の飛び出しはあるものの状態はとっても良い。多分あと25年は着れそうなほど、耐久性に対する信頼度が高い。
コムデギャルソンの服は長持ちする。
— FASHIONVICTIM TOKYO (@tokyofashionlab) 2023年12月18日
結構駄目になるブランドも多いけど、素材と縫製がきちんとしているので長持ちする。一番長持ちしてるので中学の時に伊勢丹新館で母に買ってもらったオムプリュスの太畝のコーデュロイのパンツ。…
実店舗に入るのにビビりすぎてオムプリュスのリュックぐらいしか買ったことないけど、これからも少しずつ買い集めたいなと思うのでした。
川久保玲さんが文化功労者に選ばれたニュースも印象的でしたね。