365日をJ棟で

サラリーマンの諸々日記。買い物、音楽、日常。

Color Of Noize / Derrick Hodge (2020)とか他とか。

僕は熱心なビル・エヴァンスのリスナーでは無い。かの有名な"Portrait in Jazz"や"Waltz For Debby"もあんまり聴いていないし、サイドメンとしてもマイルスの諸作品でしか触れていない。ピアニストに関して言えば、グレン・ザレスキーやテイラー・エイグスティ等、近年のアーティストの方が聴く頻度が高い。

ただ、亡くなる寸前のラストアルバム"Concecration"は好んで聴く。

消えかけのロウソクに火炎放射器をパナしているかのように生き急いだ演奏、これがドチャンコ好き。酒と薬物で身体は完全に終わっているはずなのに、一つ一つの力強いパッセージが粒立ち良く耳に刺さってくる。勿論ミスタッチは一つも無い。

事後だから言えることだけど、自身の死を悟ったアーティストの演奏からは強烈な音が放たれている。

コルトレーンの生前最後の録音も、音質の悪さが相まって凄いことになっている。一度やると分かるんだけど、サックスという楽器は100%を超える出力で吹くと15秒ぐらいで頭がクラクラする。ジャズ研の合宿で深夜、同期とフリージャズやるで!言うて音楽的でない音を出す実験をしたことを思い出す。普通に疲れただけで、神には近づけなかった。そもそも無宗教だし。

後期のコルトレーンは神に近付く?対話する?ために持ちうる全ての力を振り絞ってブロウしていた(と思う)。突き抜けた情報量の音が耳を通り脳に届いた際の、処理オーバーとも言えるフワフワした恍惚は確かに超日常的で、宗教や哲学に特段の興味を持たない僕でもスピリチュアルな何かがあるのではないかと思ってしまう。その感覚は2017年にエリック・ハーランド(Voyager名義)の来日公演や、昨年のblack midiのデビュー盤"Schlagenheim"で味わった。

デリック・ホッジの最新作"Color Of Noize"のタイトルナンバーも、何度聴いても震え上がるものがある。カッコいい音楽は沢山あれど、聴きながら鳥肌が止まらない音楽はそうそう出逢えない。

ジャハリ・スタンプリー(20歳そこそこの次世代ピアニスト)が奏でるゴスペルなオルガンをバックに、マイク・ミッチェルとジャスティン・タイソンのツインドラムによる轟(豪)音が絶え間なく鳴る。音がデカすぎて、音数が多すぎて、もう1人が叩いているのか、2人が同時に叩いているのかも分からん。

またリーダーのデリック・ホッジはどの音を出せば聴き手が気持ち良いか、正解が分かっている全能的なプレイヤー兼プロデューサー。コモン、ロバート・グラスパー・エクスペリメント、R+R=NOWでの活動では無駄なく最低限ながら「これ以外ありえないっしょ!」と思わせるぐらい完璧に音のピースを嵌めてきた。"Color Of Noize"の7分に渡る音の洪水に飽きがこないのも、プロデューサー目線のデリックによるバンド全体の音量・音圧のコントロールが上手く効いているおかげかと思う。そして「もうこれ以上は上がれないのでは…!?」というところで更にアクセルが踏み込まれ、前述した恍惚に連れて行かれる。降参!

ゴスペルのセッション。狂っとる。

個人の意見に過ぎないけれど、ドラムに限るならスリル・スピード・スーパーテクニックの3Sで最も平均値の高いジャンルはDjent(ジェント)、ジャズ、そしてゴスペルの3強。いや、ゴスペルは頭ひとつ抜けていると言っても良い。幼い頃から教会で"地元の上手い兄ちゃん"の演奏を見て、その中で揉まれて育った彼らのロウソクの芯は異常なまでに太く長い。本作のマイク・ミッチェル、ジャスティン・タイソンも当然ゴスペルが背景にあるドラマー達。ガスバーナーばりに高火力な演奏でも平気なわけだ。"Color Of Noize"での無尽蔵のアイデア&テクニック&スタミナは、生まれるべくして生まれたのだなァ。

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CDも買っちゃった。

アルバムを通しては1曲目の"The Cost"とタイトルナンバーが激烈大爆弾ボンバーボンボン(偏差値3)だけど、他は甘くて聴き心地の良い曲が多いので、ぜひ手に取ってみてくださいナ。個人的な2020年のベストアルバムでした。昔はバカテクが好きだったけど、もうそういうのは気恥ずかしい時代だしなぁ…という人(=私)ほど良く刺さると思います。

採譜する男。

たまに楽器を触ると楽しい。

 

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12年目のEWI4000s

雨でサックスを担いでの外出は出来ないので、部屋でEWIを練習している。EWIといえば、例の曲で伝わることも多いんだけど、あまりにもイメージが染まってしまったこともあり、逆張りで言いたくなくなるソレ。

簡単に言うと、吹くシンセサイザーor電子リコーダー。こういった楽器は幾つかのメーカーが出しているけれど、MPCでお馴染みの"AKAI"が出しているのがEWI。軽音サークルでイキってるヤツは大体持っている。ウチのジャズ研は僕が知ってるだけで5,6人は持っていた。僕は高校の入学祝いで自分専用パソコンと天秤にかけたうえで、EWIを買ってもらった。家でずっと例のバンドの曲を練習していた。その後、大学の学際で何度かイキった。

 

02:10〜頃からピロピロ鳴っているのがEWI

大学3年の頃だったかな?にCDを買って、それはもう大変な衝撃を受けたアントニオ・サンチェスの"The Meridian Suite"。その3曲目"Channels of Energy"でシェイマス・ブレイクがEWIを使って見事なインプロを残している。

7/4拍子×12小節のワンループが基本で、5,7小節目だけ13/8拍子。このヤラしい変則ビートをガッチリ捉えつつギリギリの線で駆け抜けるシェイマスのイケ具合といったら、僕にとってEWIと"もう一度出会った"と思えるぐらいの衝撃だった。

かつてコピーを試みたことがあったけれど、始めの4小節ぐらいで当たり前のように挫折し、そこからこの曲に関しては聴き専になっていた。

 

しかし昨日から急に「この曲を完遂出来ないまま天国(あるいは地獄)に行くのは嫌だな」と思い、気合を入れて譜面に起こした。再生したMIDIと本家の音に微妙な違いがあるので修正は必要なものの、割と頑張ったと思う。(恥ずかしい話ですが特に音感等が無いので4時間ぐらいかかりました、コード進行はおろかキーが合っているのかすらも分かりまへん)

譜面に起こすことへの是非は色々ある。尊敬しているボブ・レイノルズは「耳をキチンと使うこと」を推奨したうえで、音源をスロー再生して音を取ることや、俗に言うコピー譜を使うことに否定的な立場を取っている。

僕もインプロの一部を楽譜に起こすことはあるけれど、こうやって1分を超える数十小節単位の音を譜面に起こすのは初めて。これがやってみると結構楽しい。これホールトーン(リディアンオーギュメント?)なんだ、ここは手癖かな、ここは本人的には16分音符一つ早く演奏する予定だったのかな、的な。頭が悪いので、耳コピ+脳内処理だけだと音符1つ1つの意味を追いかけることが出来ないので、フレーズを視覚的に捉えられるのは便利。

 


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EWIは恐らくテナーサックスと同じB♭にトランスポーズしているはずなので、転調して練習しやす。

あとは、コレを吹けるようになるだけ。オロロ………年内には何とか形にしたいね…

 

マリオカート64のタイトル曲より

サンチェスのグループを去ったシェイマスの後任として加入したチェイス・ベアードも、例に漏れずEWI奏者であります。これもカッコいいんだよね。

ある愚か者が歌詞を読み解く場合…(What a Fool Believes)

ここ1週間ぐらい、ドゥービー・ブラザーズのホワット・ア・フール・ビリーヴス(ある愚か者の場合)を延々リピートしている。

 

恐ろしいほどの中毒性。口からCD音源とかいうレベルでは済まされない。

メインボーカルのマイケル・マクドナルドの歌唱力が遺憾無く発揮されすぎている、究極ポップソングの一つ。

家で出ない裏声を捻り出しながら口ずさむ僕のことはどうでも良いとして、この曲はどうも歌詞の意味が取り辛い。

恐らく過去に恋仲(とまではいかなくとも親しい間柄)だった男と女がいる。男=愚か者は彼女がもう一度自分のものになってくれると信じている。女には、もうその気が無いにもかかわらず…

パッと聴いたところの大意はこんなところだろうけれど、文ごとにキッチリ読もうとすると京都大学の二次試験か?というぐらい謎。和訳を記載しているブログは何個もあるけれど、どれもニュアンスが微妙に異なっているうえに意訳色が出過ぎていて余計に混乱する。

ところがあるブログにリンクが貼られていた、歌詞の解釈を各人で書き込む(言うなれば歌詞を"英訳"する)海外サイトのレスを見て、一気に落ちた感覚を得た。

https://www.lyricinterpretations.com/doobie-brothers/what-a-fool-believes

以下、私による適当な翻訳を掲載致します。

解読する上で重要なのは句読点*です。キーとなるフレーズは"愚か者が信じているものは、どれほどの賢者であろうと理屈で退けることはできない(What a fool believes he sees, no wise man has the power to reason away)" "あるとされるものは、何もないよりはずっとマシだ(What seems to be is always better than nothing)"の2つです。

意訳するなら、"信じ込んでいる愚か者に理を説こうとするなんて、考えるだけ無駄だ。彼は自分の見たいものだけを見ているから、彼の誤ちを納得させるのは不可能なんだ。でも待てよ、彼は妄想に浸っている方が幸せなのかもしれない。孤独な愚か者にとって、幻想の中の愛は空虚な愛よりはマシかもしれないのだから"となります。

この曲は、とある女性が大昔に知り合いだった男性と少しの時間だけ会っている、そんな物語です。恐らく彼らは、何度か破局を迎えているか、あるいは彼が彼女に一方的な恋心を抱いているだけの知り合いでしょう。いずれにせよ、男は彼女のことを想い続けているけれど、彼女は長い時間の中で彼に思いを巡らせたことすら無いのでしょう。

彼は話を持ちかけて、なんとか彼女との懐かしい記憶を思い出させようとします。彼女は優しく微笑んで、それから嘘の謝罪("まあ、もうこんな時間!行かなくちゃ、会えて良かったよ。私たち、また近いうちに会いましょうね。さようなら")をサッと伝えて立ち去ります。

彼女にその気が全く無く、彼との関係をこれ以上は深めないために立ち去ったことは、分別のある人なら誰だって察することです。でも彼は恋に盲目ですから、まだ希望はある、彼女が自分に惚れる可能性はある、と自分自身に言い聞かせているのです。

思い当たるフシがある人間、いるんとちゃうか!(陰キャの私は特にありませんが………)

*に書いてあるように、歌詞の一文をどのような句読点で区切るかで読み解きの難易度が激変する。僕の場合は、多くのポップソングの様に、Aメロ・Bメロ・サビ単位で歌詞を分けて考えていたことがワチャワチャの原因であった。

一例としてBメロ⇒サビを挙げると、メロディーの連続性から、

"As he rises to her apology, anybody else would surely know, he's watching her go. But what a fool believes he sees, no wise man has the power to reason away."

こう聴こえてしまっていたんだけど、実際は…

"As he rises to her apology, anybody else would surely know (that she has nothing to do with him anymore). He's watching her go, but what a fool believes, (is what) he sees. No wise man has the power to reason away."

こう捉えるとパパッと道が拓けて、意味が簡単に分かる。

サビ後半⇒2番Aメロも同じで、歌詞を段落通りに受けると、

"What seems to be is always better than nothing. Than nothing at all. Keeps sending him somewhere back in her long ago. Where he can still believe there's a place in her life."

ちょっと何言ってんのかマジで分からない。これも整理すると、

"<What seems to be> [is] {always better than nothing, (better) than nothing at all}, [keeps] {sending him somewhere back in her long ago, where he can still believe there's a place in her life}."

括弧の付け方が合っているかは謎、What seems to beが遠く離れたkeeps sending himに係ることが伝わってほしすぎる。

2番歌い出しの"彼を過去に送り続けている"ものが、彼がそうであると信じているもの、つまりワンチャンあるで精神であるということもスンナリ落ちた。

もちろん冒頭の大意を掴むだけならこんな作業は必要なかったんだけど、改めて行の繋がりを読み砕くと曲の聴こえ方も以前より変わってくるものがあって新鮮。まぁ、多くの人はそもそも歌詞なんて聴いていないようですが…(僕はサウンドと同じぐらい歌詞に耳を傾けるタイプです)

 

33歳の風貌ではない

もういっちょライブ映像。恐ろしいのはバックミュージシャンの歌唱力。キーボード、ベース、サックス、ギター(ロベン・フォード!)がサビで歌っているけれど、全員がキチンとファルセットを当てている…歌って踊れるスタジオミュージシャンというのは流石米国といったところ。

追記:上の動画でサックスを担当しているのはフランク・ザッパのバンドに所属していたロバート・マーティンでした。お前だったのか、He's So Gayでエッチな声を出していたのは…

ホホホホンホ~ホン♡

 

それにしても、マイケル・マクドナルドはスティーリー・ダンのバックコーラスとしての印象が非常に強かったので、後からドゥービー・ブラザーズに加入していたことを知った時にはエッ!と思うた。硬派&ストイックなイメージのスティーリーと、陽気&カジュアルなイメージのドゥービー、対照的な両者だからこそ未だに実感が湧かない。サンダーキャットと共演していることを考えると、大したことではないのだけれど…

 

Aja (Remastered)

Aja (Remastered)

  • スティーリー・ダン
  • ロック
  • ¥1324

ありきたり度MAXながら、やっぱりスティーリー・ダンは"Aja"が大好き。ディアンジェロの"Voodoo"と同じでパッとした分かりやすさは無いけれど、気がついた頃には自分の音楽観のリファレンスとなっていた1枚。かの有名なラリー・カールトンの"Room 335"の元ネタとなった"Peg"は勿論のこと、"I Got the News"で一瞬だけ登場するマイケル・マクドナルドのコーラスは正に国宝級。ジャケ写の山口小夜子さんも、日本人のモデルで一番好きな方です。

2020年上半期の音楽。Pt.1

聴いてるようで全然聴いていない、いつもの状況。

6月の終わりまで待てば良いのだけれど、気持ちを整理するべく、特によく聴いている音楽を一旦放出致します。積みアルバムが多すぎるんだぁ…

アルバム、曲が混在しておりますが。

 

・All I Need (Djesse Vol.3) / Jacob Collier with Mahalia & Ty Dolla $ign

All I Need (with Mahalia & Ty Dolla $ign) - Single

All I Need (with Mahalia & Ty Dolla $ign) - Single

  • ジェイコブ・コリアー, Mahalia & Ty Dolla $ign
  • R&B/ソウル
  • ¥255

2020年代の始まりから、なんてものを………

もはや怪奇。イギリスの超才音楽家、ジェイコブ・コリアーが2018年より毎年リリースしている、全4部作の組曲"Djesse"。その第3弾が出ようとしている。ネガティブ・ハーモニー、マイクロトーン、ポリリズムを駆使したオタクのオタクによるオタクのための宇宙&地球ミュージックが炸裂していた過去作から、この先行シングルで"大衆受けしないアルバムで2年連続グラミー賞を獲った音楽オタクの俺が究極のポップミュージックに取り組んだら音楽史に残る名曲を量産してしまったんだが?"という新たなステージに進出。なに言ってんの?

昨年の"土曜日のフライト/Wake Up, Girls!"に続く"What a Fool Believes / Doobie Brothers"系統のリフ(そんなものはない)はハズしようがない正義。初期はバス〜ソプラノを含む歌や、楽器演奏を全て自分でこなしていたのが、近頃は多種多様なミュージシャンの声・演奏を取り入れることで金太郎飴感が無くなっており、一歩ずつ確実にヒットチャートをシバきにきているのが感じられます。

本曲のレコーディングで使われたトラック数は646個。なに言ってんの?

音楽星人が攻め込んできた時に、地球代表を選出するなら大将はジェイコブ・コリアー。負ける気せえへん地元やし。

 

・実意の行進/焦点回避/松木美定

再生回数3,000て…

昨年あたりから急浮上しているらしい、シンガー/コンポーザーの松木美定(まつき びてい)さん。知ったきっかけは現代ジャズ繋がりのフォロイーのツィート。プロフィールを見るに、僕と同い年?

ありがちな「ジャズをポップやロックのフォーマットに落とし込もうとした結果、とんでもなくダサくなる」現象が全く起きておらず、ジャズの様でなくてジャズなトラックと、浮遊感のある歌声がグッドマッチ。"実意の行進"の「まあよくあることさ」という歌詞(Just One of Those Things)の引用、ジャズスタンダード曲を思わせる"焦点回避"のご機嫌なメロディー等、随所にジャズを丁寧に通っていたと思われる痕跡が残っていて、もう好き。

今年、加速度的に人気が上昇することは間違いないと思います。

 

・NOVO RITMO / シンリズム

NOVO RITMO - Single

NOVO RITMO - Single

  • シンリズム
  • J-Pop
  • ¥765

神戸出身、22歳のシンガーソングライターのニューシングル。ブラジル音楽って、ジャズやヒップホップ以上に沼が深い気がしていて、どうしても手を出せずにいます。ホントに、アントニオ・ロウレイロ、ペドロ・マルチンス、フーベル、オ・テルノぐらい。

耳馴染みのあるサンバ・ボサノヴァの進行・リズム、柔らかな歌声。松木美定さん同様、ブラジル音楽のエッセンスをJポップのフォーマットに落とし込んだ美曲たち。歌詞は日本語、構成もJポップのABCメロがベースなので、曲中の起承転結も把握しやすい。(この辺の分からなさが、本場のブラジル音楽に手を出せていない大きな理由)

初夏の気候にもよく合うので、今から聴いて、年末まで聴き倒しちゃおう。もしかしたら本作がきっかけで、僕のブラジル元年が訪れるかも。

 

・Tetrahedron / Ernesto Cervini

Tetrahedron (feat. Nir Felder)

Tetrahedron (feat. Nir Felder)

  • Ernesto Cervini
  • ジャズ
  • ¥1528

カナダ出身の現代ジャズドラマー、エルネスト・チェルヴィーニの新作。実はエルネスト氏は初聴きですが、最愛ギタリストのニア・フェルダーが全面フィーチャーされていることで知ったアルバムです。LOVE♡(6月に出るニアの新作も楽しみだね♡)

"朝日のようにさわやかに"の魔改造アレンジに驚異的な中毒性アリ。ベースのリフだけで白米余裕。朝日でもなければ、さわやかでもない。テーマも曲の終盤まで始まらない。何も分からない。

2曲目も音のスペース広めのハードボイルドなインプロ合戦といったところで、気になる女性とのデートで行ったジャズバーでこの演奏が始まったら"終わる"だろうけど、隣のテーブルには思わず頭を前後左右に揺らしながらニヤけ顔で唸り声が漏れているキモ・オタクがいることでしょう。それが僕です。

タイトルも良い。四面体。何が。

 

・30 / YeYe

30

30

  • YeYe
  • J-Pop
  • ¥2139

"あつまれ どうぶつの森"でも島名(ゆらゆら島)にしてしまった、それほど魅力と魔力あるオーストラリア在住のシンガーソングライター、ィエィエの新作。

りりか(in living.)さんが主演の"ゆらゆら"はYouTubeで770万再生を超えたけれど、あの曲の様なソフトな音使いは寧ろレアで、強めに歪んだり弦跳躍を利用したファンキーなリフを奏でるギター、音割れしそうなぐらいドンダン鳴るドラムなど、一味効いた曲が多い。

打ち込みやシンセサイザーのサウンドが主軸の今作でも、ィエィエの歌声が乗るだけで角が取れた優しいサウンドに聴こえる。カート・エリングなんかもそうだけど、声が良いとそれだけで音楽が成立するよね。どうでもいいけど、最近までトーン・ポリシングを"Tone Polishing"、すなわち声色を磨くことだと勘違いしていました。大事だよね。

レディオヘッドで言うクリープの様に、マスへのウケ方が自身の方向性を阻害しかねない中で、ブレない音作りを追求しているィエィエを応援し続けたい。

 

・ソンナコトナイヨ / 日向坂46

やっぱり東村芽依さんだよなぁ。

秋元康傘下のグループの中で最も勢いがあると思われる、日向坂46。

他を寄せ付けない顔面と可憐なキャラクターでアイドルを再定義した乃木坂46と、狂気的なパフォーマンスで上り詰めた欅坂46のDNAを併せ持っているだけあって、ルックス&ダンスの総合的な魅せ方がダンチ。10年前の48グループを彷彿とさせる高出力のポップソングを2020年でもウケさせるのは、真に実力のあるアイドルだからこそ出来るワザ。

 

・I see… / 乃木坂46

賀喜遥香さんと清宮レイさん、ヤバくね?

既に話題にあげたことのある曲ではありますが…「SMAPっぽい」とネット上で騒ぎになった、乃木坂46の4期生によるニューソング。嵐の"Love so sweet"等を手掛けたyouth case氏の作曲であり、SMAPと嵐を掛け合わせた様なハッピー・ポップがジャニーズファンをも巻き込んだムーブメントに。結果、白石麻衣さんの卒業シングルである表題曲"しあわせの保護色"の再生回数を大きく上回ってしまうことに。

それでいいじゃん

それでいいじゃん

  • 東京女子流
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

こっちは"青いイナズマ"や"KANSHAして"等、ホントにSMAPの曲を手掛けた林田健司氏の作曲

でもさ、SMAPっぽいアイドル曲なら、漏れ達アスタライトとしては東京女子流の"それでいいじゃん"を真っ先に挙げたいよな?(老害)

 

 

毎度の節操なしセレクト。楽しい!6月もいっぱい聴く!

Terrible Animals / Lage Lund (Criss Cross, 2019)

Terrible Animals / Lage Lund

Terrible Animals

Lage Lund (Gt)
Sullivan Fortner (pf)
Larry Grenadier (B)
Tyshawn Sorey (Dr)

Criss Cross Records, 2019

 

Lage Lund(ラーゲ・ルンド、ラゲ・ルンド)に関して   

 ギターの指板をほとんど見ず、虚空を見つめながら演奏するイケたスタイル。(本人曰く、天井のタイルを数えているんだとかいないんだとか)

 

ノルウェー出身NY在住のジャズギタリスト、ラーゲ・ルンドジュリアード音楽院の歴史上初めてエレキギターでジャズ科に入学したという、異色の経歴を持っています。

サイドメンとしての参加作品を含め、精力的にアルバムをリリースし続けている39歳(2019年現在)です。北欧的な顔がタイプなのよね、アタシ。

箱モノのギターから出る透明感のある音色、迷いを感じない流麗な手さばき、先鋭的なリズム・和声のコード弾きを織り交ぜた演奏が特徴…おそらく。

ラーゲの名前は数年前から知っていたし、演奏も時たま聴いていたものの、これまで参加作はほとんど聴いてこなかったので、今回のリリースをきっかけにツマンでみることに。

 

Terrible Animalsに関して

ジャケ写

 

クリスクロスといえば、こういうイメージ。

ギターを構えるラーゲのスケッチを見て、見知らぬレーベルかな?と思ったら、まさかの名門Criss Cross。「クリス・クロス=市街地を背景にした実写ジャケ」が僕の中で(勝手に)定番化していたので、意外。

ジャケから既に''変化球感''がビンビン。

 

Tyshawn Sorey(タイショーン・ソーリー)の参加

ドラムに共演歴の長いビル・スチュワートやマーカス・ギルモアではなく、タイショーン・ソーリーを新たに起用。ソーリーはヴィジェイ・アイヤーのセクステットでの巨大な''うねり''が迫ってくるようなスケールの大きいプレイが衝撃的だったし、ソロ作のPillars(3枚組構成で4時間)(!)も絶賛リリース中。僕にとっては「タイショーン・ソーリーの参加=ヤバいのが来るぞ」という方程式が成り立ちつつあります。

 

アルバムの中身ちゃん

www.youtube.com

 

ソーリーの参加もあり、個人的には期待値を高めてリリースを待っていた本作ですが、これが中々の怪作。

1曲目(Hard Eights)では冒頭からペュワ~オォ~ンというシンセ音が飛び交う。軽快にスウィングしているように聴こえるテーマ部も、可愛らしいメロディーと重々しいバッキングに大きなギャップがあり、何とも言えない虚無を感じる。ピアノのサリバン・フォートナーは個人的に初めて聴く人だし、ダイナミックなピアノソロを弾きながら曲は進んでいく。このまま僕だけが取り残されてしまうのではないかしら…と、ソワソワしているところへ、空を切り裂くようなラーゲのギターが割り込んでくる。これだけ濃密な音の中でも存在感を放つ、ラーゲらしい(としか言えないのがもどかしい)クリーントーンにホッと一息。そうだ、これはラーゲのアルバムだった。この緊張⇒安心の落差で、気持ちが一気にほぐれる。細かい部分でのおどろおどろしさはあるけど、全体に耳を澄ませて聴いてみると何も難しいことはないじゃないですか。

ラーゲのソロに突入してから、ここまで比較的オーソドックスなビートを刻みながら様子を伺っていたソーリーも、ラーゲに呼応してプレイの質・量ともに爆発。うおお、これはとんでもなくカッコいいぞ。

1曲目での緊張⇒緩和を経た聴き方をしたせいか、2曲目以降も4人が作る引き締まった空気と、それを指先ひとつで解いてゆくラーゲの世界観にどんどんハマっていく。緊張感のキャッチ・アンド・リリースや~!(何もウマいことは言っていない)

アルバムを通して印象的だったのが、ピアノとギター(時たまベースも)が同じフレーズを演奏することで生み出される立体感。特にタイトル曲のTerrible Animalsはギターの重ね録りによる微妙なズレが気持ち良し。こうしたユニゾンが増えることで必然的に音数は減るので、曲調・演奏メンバーの割にはシュッとしたサウンド胃もたれせずに聴けるのではないでしょうか。ベースのラリー・グレナディアがビート・ハーモニー・メロディーの根本を崩さない、マス目に沿った丁寧な演奏を貫いているので余計にそう感じるのカモ。

Criss Crossは超大作的なサウンドもコンパクトに纏めてくる印象があり、それが悪い方向に作用することもあるのですが、本作は音の鳴り方もバッチグー。

初聴き時の異質感が段々と癖になってくる、個性派揃いの現代ジャズにあっても強烈なインパクトを持つ一作。リリースからヘビロテで、2019年は大変お世話になりそうです。

 

Terrible Animals

Terrible Animals

 
Pillars

Pillars

 
ザ・グリーナーズ

ザ・グリーナーズ