あまり詳しい内容を把握していないトピックスだが、少し前にXで「韻を踏んでいないラップの是非」が問われていた。
私感は「韻を踏んでいるかどうかより、スウィングしているかどうか」でラップに耳を傾けている。スウィングを定義するってのがそもそも難しいけれど、なんつーかフィーリングっつーか、ジャズってるかなんすよね。
JJJはスウィング感が綺麗だったというのは訃報の際にチビチビと述べた。逆にSTUTSの"Rock The Bells"でのKMCを聴くと、ほとんど韻を踏んでないし心地悪いなぁと思う瞬間もあるんだけど、妙な音符の割り方が意外と好きだったりもする。今年のフジロックでのSTUTS客演も、配信越しに熱量が伝わってきて最高だった。
それこそKMCはコルトレーン的な揺らぎ方というか。みんな大好き"Blue Train"もそうだし、コルトレーンってインプロは基本形の8分音符、3連符、16分音符だけじゃなくて間に5連符だったり、不規則な音割を差し込むようなタイム感をするよね。いま出したい音の連鎖を2拍の間に奏でようとしたら、そうなっちゃった感じ。ジャズのスポーティーな高速化・微細化の果てに到達したシーツ・オブ・サウンズを開発しながらも、その対極にある割り切れないフロウを両立していた点が、コルトレーンの唯一無二なところなんじゃなかろうかね。ジャズ研時代にもコルトレーンをコピーしようとしたけど、2と3の倍数じゃない譜割りを捉えるのが無理で諦めた記憶。(才能ナシ!)
むかし買ったサックス専門誌で、菊地成孔氏がこの独特のフローはコルトレーンの才能によるもので、後進ではマイケル・ブレッカーとウィントン・マルサリスが極めて高いレベルでインプロに適用できている的なことを述べていたと思う。たしかにマイケルのコピーをしようとすると(もちろん途中で挫折するが)、ここは何分・何連かを考えずに2拍で一気に駆け上がることを意識すればラクだな…と思うことが多かった。(当の本人は意識下でコントロールしていたはず)
逆に先述の"Blue Train"でコルトレーンの後にインプロをするリー・モーガンは速いフレーズもめちゃくちゃ綺麗に16分音符+16分3連で割るし、スローなフレーズでの緩急も素晴らしいし、これがJJJやフレシノ的、スムーズな気持ち良さだと思う。改めてこの時のリー・モーガンが19歳なの、意味わからんよな。その後もウィントンとか、アダム・オファリールとか10代の天才って現れまくってると思うけどクリフォード・ブラウンとリー・モーガンは異様に突き抜けている感。
冒頭に戻り、ラップはジャズ同様、韻や音の割り方が必ずしもフォームに沿っていなくても、気持ちよいタイミングで音が鳴っていれば好み。そしてそう感じる瞬間の多いラッパーは、それだけスウィングしながら韻を踏んでいることが多い。そんな感じですかね。
ちなみに10代のヤバい演奏ランキング(脳内)、個人的には16歳のアーロン・パークスと14歳のクリス・ポッターが殿堂入り。こんなん、並のジャズミュージシャンが一生涯かけても到達できそうにない領域じゃん。この2人は今もなお進化し続けている点に、更なる凄みを感じる。(アーロン・パークスは神童扱いされる苦しみを抱えながら大人になったとどこかで述べていたので、なかなか難しい話ではあるけれど)