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TOMOO Live at 日本武道館。

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TOMOOの武道館公演に足を運んだ。ファンクラブ会員の友人がチケットを手配してくれた。

2022年、心斎橋のキャパ300人規模のライブハウスで行われたTOMOO×ステレオガール×Cody・李の合同イベントを観てから、月日は経ち3年弱。キャパ14,000人の武道館、2階席から観るTOMOOは、ソラマメくらいのサイズ感だった。

とはいえ、私はメジャーデビューシングル"オセロ"からファンになった身。2010年代から応援してきた古豪たちが抱くであろう感慨はそこまでなく、むしろ"オセロ"を初めて聴いたときの「とんでもないのが出たな」という衝撃が、武道館という形でようやく結実したことに対してヤキモキしていたタイプだ。

 

上述の合同イベントからは、2024年に1stアルバム『TWO MOON』のリリースを記念したホールツアー、今回の武道館公演でサウンドディレクターを務めた小西遼さんが主宰する〈象眠舎〉(TOMOO氏はゲストシンガーとして出演)に足を運んだ。

これまで3回ほど生で聴いてきた中では、リッチで果実感ある瑞々しい楽曲陣に対して、CD音源と現場の出音にやや乖離があって「楽しいけれど、120%は満足できていないな…」という感覚があった。(なにを偉そうに!)

メジャーデビュー以降の楽曲はホーン/ストリングスを豪奢に取り入れた録音が増え、それらの楽器を用意できない公演におけるバンド編成+シーケンスでは、どうも迫力が不足する瞬間があるなと。その意味で〈象眠舎〉は絶好の機会だったと言えるが、アウェイ気味の空間でTOMOO氏はガチガチに緊張しており、観ているコチラ側も手汗が噴き出てしまった。

また、良い意味でギュッと詰まった濃密な楽曲陣も、ライブ映えの観点では「楽器ごとのソロを豪快に鳴らすオープンスペースが少ない」と取れる。ライブにおいて多くの楽曲は音源の尺通りで終わるため、「あと一押しが欲しいぜ!」と感じたことも一度や二度ではなかった。

 

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そんな過去の印象をすべて吹き飛ばすが如く、武道館は一点の曇りもなく、本当に素晴らしいステージだった。

最寄駅である九段下が歌詞に登場する"HONEY BOY"か、金曜日にちなんだ"Friday"で始まるのではなかろうかと(勝手に)予想していたが、360°を囲うファンたちによる万雷の拍手と共に登場したTOMOO氏が選んだオープナーは"Ginger"だった。

緊張とカタさを感じるシーンは序盤にありつつも、続く"Friday"や"恋する10秒"を聴きながら、やはりポップでキャッチーなナンバーを作らせて今TOMOO氏に勝る存在はいないのでは?と一人感極まりまくっていた。

なにより今回の公演は「武道館スペシャル」と称する編成で、バンマス・大月文太さんをはじめとするお馴染みのバンドメンバーに、パーカッション、コーラス×3、ホーン×5、ストリングス×8が加わったラージアンサンブル形式。開演前から大きく期待していた通りで、先述したサウンドの惜しさを感じる部分は一切なし。小西遼さんのディレクションのもと、ピアノ/ギター/ベース/ドラムのみだった既存曲も彩り豊かに、かつ広大な武道館をしっかり満たす音像へと生まれ変わっていた。

 

幸福な気持ちで公演が進む中、TOMOO氏の歌唱スイッチが明確に切り替わったと感じたのは、ミディアムバラードの"17"以降だった。

新アレンジのストリングスも加わった弾き語りの歌い出しから、明らかに声が伸び、表情の緊張が解れ、武道館に対する遠慮のようなものが落ちたと感じた。(私が同曲を好きという贔屓目もあろうが…)

以降の演奏は出色の出来どころか、後年になって振り返っても伝説と評されるのではないか?と感じるレベルであった。

未音源化の"ナイトウォーク"と"Your Friend"、デビュー前の初期曲である"金色のかげ"、EIGHT JAM(旧:関ジャム)にて2023年の年間ベスト楽曲として紹介された"Grapefruit Moon"に"Cinderella"、弾き語り〜バンド編成を問わず、全ての出音が洗練され、美しく鳴り響いていた。

 

とりわけ"Grapefruit Moon"は、今回の編成におけるエンパワメントを最も強く受けていたと感じた。

Grapefruit〜は数あるレパートリーの中でも非常に綿密に作り込まれた楽曲の一つ。ロバート・グラスパーのような反復するテンションコード、デリック・ホッジのような超重低音、それとコーラス、ホーン、ストリングスが濃く絡みながらTOMOO氏の歌唱を底上げする3分間。今回の編成とデカい音が出せる武道館は間違いなく合う。(音源と比べて、ライブではドラムの河村さんもレイドバックは強め。おそらくはロバート・グラスパー・エクスペリメントやR+R=NOWを意識しているのだろうと思う)

コーラスも入った終盤にかけてのダイナミクスの広がりには鬼気迫るものを感じたし、呼応する河村さんのドラムや勝矢さんのベースも素晴らしかった。個人的な武道館のハイライトになる一曲。

 

どちらかといえばライブって、CD だと目立ちにくい楽曲の充実度を再認識させられる場になりかちで、意外とシングルカットされる楽曲(いわゆるキラーチューン)が「箸休め」になることもあったりするよね。

しかし高カロリーな演奏にウルトラ調子が良い TOMOO 氏の歌唱が続くもんだから、編成・アレンジ自体はシンプルな(セトリの中では箸休めポジションになり得る)"オセロ"でさえ、とてつもない爆発力と音圧で襲い掛かってきて、そこに良い驚きがあった。

それまでの賑やかな空気がスッと退く、弾き語りオンリーの"エンドレス"も「この美しい瞬間を逃したくないな」という気持ちからか、スクリーンの映像そっちのけでピアノと向かい合う TOMOO氏に釘付けだった。

以前のライブで感じていた物足りなさ、ここには一切ないな…そうやってしみじみ味わっている中で始まった"Super Ball"はGrapefruit~同様、管弦とバンドサウンドの重ね合いが跳ねに眺ねていて、思わずガッツポーズしてしまった。

これまで大サビから盛り上がりきる前に〆ちゃうんだよな、もうひと爆発が欲しいんだよな、と感じていたところも、1番Aメロから既にエンジン全開。3分半という短めの尺に過不足を感じることなくハイテンションで駆け抜けた。曲が終わった瞬間に轟く歓声と拍手に、14,000人それぞれの想いが乗っていた。

MCでは武道館公演の裏コンセプトである"透明な器"についての話もあったが、なかなか私の語彙では説明ができないので、時間をかけてしっかり咀嚼して飲み込んでいきたいと思う。また配信か円盤化の際にチェックしてください。(投げやりすぎるやん、めちゃ大事な話なのに)

 

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今回はTOMOO "TWO MOON" Tee, PWA UNIHOME-03, Last Resort AB CM001でした。

武道館もとい東京って大阪から遠いから足を運ぶにはお金も有休も飛んでいくし、心理的なハードルは高いのだけれど、一夜限りの2時間半は心底楽しかったし行けて本当に良かった。友人には大感謝しかない。

公演の後には2ndアルバムと25-26ホールツアーがサプライズ発表。まだまだ快進撃は続くだろうし、武道館だって今の勢いからすれば上り坂の途中に過ぎないよなと。これからの活躍もますます楽しみ。

しかし大阪はフェスティバルホール2days…大阪城ホールじゃないんか〜い!唯一の不満点でした。