PWAのUNIHOME-03を買った。
今年に入ってからはLast Resort ABのスニーカー、小袋成彬氏のツアーTシャツぐらいしか買っていないので、物欲のスロースターターである。最近なんとなく買い物に対して及び腰になっていて、もちろん理由は色々あるんだけど、まぁ我慢していたというよりは無意識に控えていた。
そんなところで、いつも購読しているブログ"get ready"のMKTさんの自費ZINE "CORRESPONDANCE"を読んで、掲げられた「消費の肯定」というビジョンにジュワ〜っと心が雪解けした感覚を得た。
"CORRESPONDANCE" 個人による熱を持った趣味への語りは、最も好きなジャンルの一つ。だから私もブログを続けている。
30歳を過ぎると、以前にも増して生き方が「人それぞれ」になってきたなと実感する。心配になるほど働く人、子育てに勤しむ人、学生時代は思いもよらなかった過ごし方をしている人。
少し前に、たまたまInstagramで高校時代の同級生(面識なし)が百貨店勤務を経て地元にセレクトショップをオープンしていたことを知った時に、それを改めて感じた。隣の青すぎる芝を眺めながら、 いつまでもチャチな消費をしてブログでキャッキャしている自分が少しショボったく感じた。
別に誰に言われたわけでもないのに、もうちょっと世のため家族のために浪費は控えましょうよ笑、と変な自意識に囚われかけていた私に、前述した「消費の肯定」はクリティカルヒットしている。
そもそもここ数年を振り返って、私を前に進めてきた原動力の一つは間違いなく消費だ。働いて稼いだお金を何かモノコトに変換し、充足した気持ちで何時間もそれを眺めたり、ブログにしたためたり。買った服を着る楽しみもあるが、それを荒削りに記録として残すことの楽しみもある。
別に毎月の可処分所得の全てを衣服に注ぎ込んでいるわけではないし、一応コツコツと家計管理しつつ貯蓄はできているつもり。その範疇において、果たして16,500円のズボンを一着買うことに何の問題が?おい、急に開き直り始めたぞ。
PWA UNIHOME-03 Black, L
PWAはプログレッシブ・ワーカーズ・アソシエーション。変わり者の労働組合。変わった人、極端な人、独立した人の日常を応援するブランド。個性は服ではなく、着る人に宿るというコンセプトも。
アウター含め色々なアイテムを展開しているブランドだが、購入したUNIHOMEシリーズ、それもUNIHOME-02と03のパンツがコア製品として毎シーズン販売されている。02は太め短め、03は細め長めの対照的なシルエット。私は夏場を想定し、スッキリとした03を選んだ。秋冬なら02かな。
特徴的なのは、リサイクルポリエステル100%のドライタッチな生地。繊維商社出身のデザイナーが自負を持って選定した生地は、化繊らしさを隠したウールライクなタイプ。
元々、ウール風のポリエステルって全然好きじゃなかった。天然繊維であればあるほどいい、ポリをブレンドするな、ウールライクに逃げるな、プラダのナイロンは高すぎないかと思っていた。プラダに対しては今も思っている。
ただ最近、コットンやウール100%のシワが厄介だと感じる場面も増えてきた。旅行や出張での長距離移動、特に新幹線は同じ姿勢を続けているとズボンには深いシワが入る。帰りであれば、家で洗濯なりアイロンなり処理できるが、行きの場合は難しい。ホテルでアイロンやプレッサーを借りるなどで処置はできるが…さらにコーヒーをこぼしたら?急な雨に降られて泥汚れがついたら?汗をかきまくったら?など考えると、ウールは基本的に洗えないし、コットンも洗えたとて翌朝までに乾いていないことだってあるわけで。
かつて敬遠していた化繊が、よく考えたら最強に思えてくる。 これは昨年のアメリカ旅行用にニューバランスのMET24を買ってから強く感じている。どれだけ深く腰掛けても折り目はほぼ付かないし、ストレッチも効いていてノンストレス。汚れたらホテルの洗面台で洗えばいい、2時間もあれば乾ききる。また夏用にユニクロの感動セットアップを買って本当に感動した。どれだけクッシャクシャに丸めても全くシワが入らないのだ。TPOも考慮しつつ、四季を問わず取引先に着ていくようになった。
話は戻り、UNIHOMEのポリエステルは、個人な理想に近い。厚さがちょうどよく、脚を曲げても突っ張らないし、ほどよいキックバックがある。薄いとドレープして不安だしシワ入るし、厚いと野暮ったさが悪目立ちする。ポリエステルだな〜というチラチラした光沢はあるものの、安っぽいとは思わない。
この生地感、なんとなくユニクロUの2019SS〜2020SSまで展開されていた化繊のセットアップを思い出している。もう捨ててしまったが、ああいうのをもう一度穿きたいなと恋しくなっていたので、PWAはドンピシャ真ん中と言っていい。
ジップの動きも良好。
化繊のワークパンツという風合いながら、前掛けボタンが付いていて、しかもフロントボタンは金属製のスナップ式。ディッキーズ874のようなホック式だと、大きめのサイズをベルトで縛るとホックがズレてしまうので、腰回りが安定するのは嬉しい。
ちなみにサイズ感は177cm, 69kgでLサイズがほんの僅かに緩いぐらい。レングスは腰骨で穿くとワンクッションする程度の長さなので、少し丈を短く見せるために高めの位置まで引き上げ、ベルトをで縛って穿く予定。Mサイズの腰穿きという手もあるが、お尻周りがどうだろうな…
お尻にはブランドロゴのピスネーム付き。
いわゆるスラックスのようなポケットがある一方で、シームに沿ったジップ式のポケットも左右についている。鍵や財布など、失くしたくないものを入れられる安心感があり、旅行や日常で活躍しそう。このハイドポケットは内側がメッシュなので、ポケットが重なることによる蒸れも回避できるのでは。
また右ポケットのみ、ペンポケットつき。バックポケットも合わせると、この普通の見た目で計7ポケットもあるのは面白い。
※すみません、ポケットの中にさらにジップ式の隠しポケットありました。あとフロントジップの内側にも謎のミニポケット付き。計10ポケットです。なんだこれ。
色はブラック。個人的にチャコールが欲しかったが、2月下旬のローンチに乗り遅れて即完。定番カラーのブラックとダークネイビーから、ブラックを選んだ。いやね、ネイビーのズボンは手持ちで多いんだけど、あんまり似合わないことに気づいちゃったのよね…
チャコールに後ろ髪を引かれてはいたが、実はUNIHOME-03は大のお気に入りであるサンリミットのウールポリギャバのトラウザー(PT-004)とサイズ感がほぼ同じ。ウエスト84cm、ワタリ33cm、裾幅23cmぐらいというのが、夏の個人的なグッドスタイル。秋冬は裾幅そのまま、もう少しワタリがあると良い。
PT-004はチャコールを持っているので、わざわざカラーを被せなくてもいいなとブラックを買う理由を見つけた。この2本で間違いなく暑い夏が楽しくなる。
"大金を持った貧乏人のように暮らしたい"というパブロ・ピカソの言葉もブランドフィロソフィーの一つ。PWA=プア=Poor.
冒頭で述べたように、PWAは社会システムのちょっと外れたところから新たな価値を生み出してきた変わり者たちに敬意を払い、サポートするブランド。
私はその定義に入らないであろう、普通のサラリーマンだ。だが、SNSにて写真1枚だけで情報を伝えきる、購買意欲をかき立てることが主流とされる中で、ほぼ推敲されていないシッチャカ・メッチャカなレビューになんと3,000文字も費している31歳でもある。そんなブログを9年も続けている。そのエキセントリックさを"プログレッシブ"の一種として自負しながら、今後も我流の消費をしていく。
でも化繊のスラックスが欲しいと思ったときに、ちゃんと26,000円のと16,500円のとで迷ったうえで若干のケチさが働いて後者を選んだのよね。そういうところありますよね、私。