物欲に関するブログをやっていると、健啖家ならぬ購買家なのではと錯覚してしまうけれど、多分そんなことはない。
私には「好きな割に大金を落とさない」という、やや厄介な面がある。好きなブランドを買うにしても二次流通やセールに頼りがちだ。
買うは買うんだけど、いざ!と大枚を叩く回数は思っているより少ない。極端にデカい購買をした月以外、せいぜい皆さんの飲酒代と出費は同じぐらいだろう。私、下戸だし。
iPhone 12mini、音楽再生機にしようと思ってたのにWifi繋がらなくなってもうた…
服でもガジェットでも、新シーズンのローンチごとに買える人は(基本的に)強くて偉い。オーディオもそうだろう。ピュアオーディオは近寄りがたすぎるので知らん、ポータブルオーディオの話ね。
オーディオにそれほど興味はないけれど、良いの買っちゃえ!とSHUREのSE535やSONYのWF-1000XM5、それこそAppleのAirPods Proを買う人はめちゃくちゃ偉い。私のように、良い音が欲しい割にお金は落とさず、コスパ曲線の最も美味しい領域から抜け出さず、しまいには中国の新興メーカーに辿り着いた人間もいる。趣味なんだから散財や購買体験まで含めて楽しめばいいのに、変に、本当に変にケチってセーフティゾーンから離れられない自意識が面白くない。
4年前に買ったKZ ZAX。KZ純正の激ダサケーブルに交換済み。イヤーピースはFinalのType-E。
普段は完全ワイヤレスのイヤホンとしてNUARLのN6Pro 2を使用していて、音質も不満なく通勤で大活躍している。外音取り込みモードの質だけ著しく低いものの、低遅延のゲーミングモードはSwitchでも活用できている。
有線イヤホンはKZ社のZAX。片耳にダイナミックドライバ1基+バランスドアーマチュア7基、計8つのドライバを捩じ込んで5,000円(セール時)という、コスパの概念がもはや存在しない、暴力みたいな存在。本当に良くも悪くもザ・中国らしい製品群で、搭載しているBAは米Knowles社の技術を流用して作ったとかで訴訟問題にもなったとかなんとか。
同じことを国内メーカーがやられたら「これだから…」と穿った見方をしては義憤に駆られてしまう割に、こういうところはグレー判定して買っちゃうのは悪いと思っている。だからSHEINやTemuを強く糾弾できない。今のところ私には買う理由がないな、とだけ。(発がん性物質含有はNO)
ZAXは有線イヤホンであるため、イヤホンジャックを廃止した近年のiPhoneへ装着するには、端子に対応した変換アダプタが必要。
先代のiPhone 12miniではLightning端子に対応してiFi nano iDSDやFiiO KA1を使用していたが、USB-C端子となったiPhone 15に買い替えてからは(そのままでは)使えない。ZAXの出番も減っていたし、ヘッドセットを介した通話が出来ればとダイソーで買った激安の変換アダプタでお茶を濁していた。たまには…とZAXを繋いだ場合はハイレゾ音源を流すとブッブッブッという規則的なノイズが鳴るので、こりゃ使い物にならんなと。
FiiO KA1と比べても小ぶり。サイズは大事。
というわけで、AmazonにてBQEYZ社のLin(霖)というUSB-CタイプのDACを購入した。これまた中国メーカー。そこそこ人気のDACチップ(CX31993)を搭載しているらしい。
KA1のようなポッコリした見た目ではなく、普通の変換アダプタ風。KZのアップグレードケーブル同様、ギラついた下品な見た目が最高に良い。これで2,000円ちょっとぐらい。
肝心の音質も全く問題ない。ハイレゾ音源で買ったマクロスΔの「唇の凍傷」はZAXの特徴とバッチリ合うサウンドで、ついリファレンス音源として聴いてしまう。全ての音を喧しく、煌びやかに、デカく、クリアに鳴らすゲーミングPCみたいなZAX、そのポテンシャルを半歩ほど引き上げるLin。というか正直、Lin単体の戦力はどうでもよくて、DACに繋げられたらなんでもいい。
ありきたりだが、ZAXは聞こえなかった音が微かどころか明確に聞き取れるほどの能力を持っている。アンプラクドな雰囲気のある音源での椅子の軋みや咳払いなど、明瞭に浮かんでくる。こう言うと安っぽいとは思うんだけど、マイクの前に立つ演者の表情や顔の動き、ギタリストやドラマーの腕の振りなども映像として浮かぶし、好きなアーティストだったら過去にハコやフェス会場で観た際の光景がブワァ〜っと俯瞰からスイングバイしてくるような感覚を抱く。ひたすらに想像力を掻き立てる鮮烈なサウンドを出せるのがZAXだと思う。
Linは384kHz/32bitのハイレゾ音源も鳴らすことができるので、音源次第ではこの組み合わせだけでどこまでも楽しめるのではなかろうか。というか、キチンとしたオーディオブランドで同じような音を得ようとしたら、一体どれほどのお金を出せば良いのだろう…
ダッセ〜!
何はともあれ、Lin最大のメリットは手軽さ。ポータブルを叶える意味でも、KA1より遥かに扱いやすい。無線イヤホンの便利さに慣れると有線イヤホンはどうもなぁ…と思っていたが、この組み合わせなら十分に持ち歩けると思う。
ZAXは背面スリットによって音漏れがそれなりにするし音が鮮烈すぎるとも感じるため、もう少し小ぢんまりしたシンプルなイヤホンが欲しいかも。入門用の覇者と名高いKZ ZSTXか、良い噂の聞くTRN CONCHあたりかな。
この手の商品に抵抗ない方、ぜひ3,000円前後のイヤホンと2,000円前後のDACを試してみてほしい。オーディオ観がおかしくなると思う。