好きなコード進行の話。
聴く/演るの両方で、中学時代より音楽を続けているけれど、作曲法といった理論面に関しては殆ど勉強してこなかった。大学時代に少しだけ相対音感が身に付いた時期もあったが、今はドレミの何たるかも分からない。ジャズ研にいたが、ジャムはかなりテキトーにやっていたことを少し後悔している。
そんなわけで音楽にまつわる素養・教養は持ち合わせていないけれど、何百何千も数だけは曲を聴いていくうちに、肌感覚で好きな進行や響きというのは分かってくる。カノン進行、小室進行、コンファメ進行なんかは、名前こそ知らなくともほぼ全ての人が何処かで聴いたことあるのでは。
数年前に話題(?)となったジェイコブ・コリアーによるネガティブ・ハーモニー旋風や、ゆゆうた氏により脚光を浴びたブラックアダーコード(俗称:イキスギコード)といった特殊なコード群も勿論好きだけれど、私が強く魅力を感じているのが、題名にもある「IV(△7)→V/IV」というコード進行。
必ずしもMaj7で無くても良いとは思うが。
極めてベーシックでキホンのキな進行である「IV→V」において、ルート(大体ベース)だけが動かない点が特徴。ここから「III(m)→VIm→…」とガッチリ王道的に推移するパターンが多いけれど、難しいことは考えず「IV→V/IV」にフォーカスする。
V7の転回形、III(m)への接続をスムーズにする働き等で紹介されていることもあるけれど、個人的にはそれ以上に強い響きを持つ音型だなぁと感じる。セブンス単発のエグ味がマイルドになるような、それでいて浮遊感のあるような。
私自身があまり理論的なことを分かっていないわけなので、聴くのが早いね。
該当曲の例
※自分の耳で「これはそうなんじゃ…」と思ったところを検索して答え合わせをしているだけなので、誤り等あればご容赦&ご指摘ください。
◇HANABI / Mr.Children
いきなりJ-POPの金字塔。サビの「決して捕まえる/ことのできない」が該当する。
今回挙げる曲の多くがそうなんだけど、この進行は「気持ちのすれ違い」「会いたくても会えない」といった、侘しさ/寂しさ/葛藤を唄った歌詞とセットで使われるパターンが多い。
移り進むコードと取り残されるベースライン、V/IVの衝突が生み出す宙ぶらりんの響きとリンクしているようで、この繋がりは決して偶然ではないように思う。知らんけど。
◇エイリアンズ / キリンジ
「まるで僕/らはエイリアンズ」が該当する。
気怠さのあるBPMも相まって、粘っこく伸びるベースからV/IVが感じ取りやすい。上述した歌詞の特徴ともピシャリ一致しているでしょう。
◇うまぴょい伝説/ウマ娘 プリティダービー
爆烈疾走系の電波ソング。「きみの愛馬が! ずきゅんどきゅん/走り出し」が該当。
Bメロはジェットコースター並のアップダウンで聴き手を引き摺り回しつつ、サビは単純なIV→V/IVパターンを入れることで、よりBメロの異物感が際立つ感じ。もはや情報量が多すぎてよう分からん。ちなみにウマ娘は未プレイで競馬も嗜まないので、特にゲームの内容に関しては分からず。
◇やさしさで溢れるように/JUJU(Flower)
「あなたを包む す/べてが」が該当。
プロデュースとベース演奏を兼ねた亀田誠治氏の手腕がバリバリ発揮されている。丸っと2小節もルート音は変わらないけれど、16分音符の引っ掛けが挟み込まれて歌のある味沁みベースラインに仕立てられている。モータウンっぽい感じ。歌詞の意味合いについては、もはや触れるまでも無かろう。
◇ロビンソン / スピッツ
え、この進行を紹介しておきながら取り上げないの?とは言わせまい。「誰も触/われない」が該当する。
草野マサムネの伸び〜るソフトボイスと上下左右に躍動するベースが至高の組み合わせとして機能しまくり。
◇Secret Daybreak / Dea Aurora
"アイドルマスター シンデレラガールズ"内の新田美波(CV.洲崎綾)と速水奏(CV.飯田友子)によるデュエット楽曲。「世界中がたった/二人の」が該当する。
目まぐるしく離れては合流する旋律が、要所でのユニゾンで力強さを帯び…これめちゃくちゃ好きやねん。
シンデレラガールズだと、他にも"Trancing Pulse"がサビにこの進行を使っている。こっちもな、良い曲なんだよ…
◇愛してる/ワルキューレ(マクロスΔ)
「愛してる 愛/してる」が該当。
声優や楽曲からアニメに入る悪い(?)癖があって、マクロスを全く知らない状態でこの曲を知った。先述のアイドルマスターでもCVを担当している鈴木みのりさん経由。主人公、フレイア・ヴィオンのソロ曲。
つい先日、劇場版マクロスΔの1作目(TV版の再構築)を観たところでして、めちゃ面白かった。戦闘機がカッコいい画角で飛ぶ映像と、ソウルフルな楽曲の相性が抜群。この曲は劇場版の2作目に登場するようだけど、詩の内容的にめちゃくちゃフラグじゃない?大丈夫?私の情緒は保たれそうですか?(来月難波で爆音上映会があるのでチケット取ります)
鈴木みのりさんはソロ曲の"夜空"や"Crosswalk"でもIV→V/IVが出てくるので、この和声とは親和性の高い声質なのかもしれない。そういえばマクロスFの"星間飛行"も同じだね、こっちもフレイア版あるし。ニコニコ動画の黎明期と厨二時代を過ごした私にとって、言わずと知れた曲。
◇二人セゾン / 欅坂46
この進行が好きだと認識した、そのきっかけと言っても過言ではない曲。「君はセゾン 君はセ/ゾン」が該当する。ブリッジ部の「花のない桜を見/上げて」は同じ進行で小節数が倍になるので、特に分かりやすい。
とにかく曲調や歌詞に寄り添った、キュッと心が掴まれるような風景描写のマッチ具合ときたら。欅坂46(櫻坂46)がこの方向性を堅持していたら?というifの世界は未だに想像してしまうが、今となっては大した意味はない。
秋元康傘下のグループだと「こんなに好きになっちゃっていいの?/日向坂46」「君はメロディー/AKB48」も全く同じパターン。「さよならクロール/AKB48」はAメロでの「I→II/I」という亜種。
◇Listen / Beyonce
これまで挙げた曲と異なり、サビ冒頭には登場しない変形パターン。サビ途中の「I'm more than what / you made of me」が該当する。MISIAの"Everything"(あなたが/想うより強く)もこのパターン。
サビ冒頭に意識を持ち過ぎて、(個人的に)聴き逃しやすいけれどサウンドの鮮やかさ自体は変わらない。洋楽だと、フィル・コリンズの"Against All Odds"も近い響き。
ええ曲や。
そういうわけで、ある意味「このコードが使われている=無条件で好き」というぐらい意識的に気に入っている響きである。
そしてポップシーンにおける名曲で多用されている割には、情報が少ない気がする。列挙した曲で検索しても、あくまで王道進行(と変形)としてしか紹介されていない。検索法が悪いのかな。「ドミナント ルート」とかじゃ出てこんか。
とにかく、この進行が入ると無条件でハマるのが私なので、ご存知の曲があればコメント欄でジャンジャカお教えくださいな!