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サラリーマンの諸々日記。買い物、音楽、日常。

Flight Of The Blue Jay / Paul Motian and the Electric Bebop Band (1998)

先日の記事で紹介した、ボブ・レイノルズのVLOG内で述べられている1枚のアルバム。

 

それがReincarnation Of A Love Bird / Paul Motian and the Electric Bebop Bandです。90年代、若き日のクリス・チーク、クリス・ポッター、カート・ローゼンウィンケル、ウォルフガング・ムースピールが在籍した、ツインサックス、ツインギターのかなり変則的な編成。でも、やるのはビバップやそれに準ずる語法を取り入れた曲。なんてったってエレクトリック・ビバップ・バンドですから。どこぞのヘビー・メタル・ビバップ(大好き)とは違うんです。

しかし、このアルバムはとうの昔に廃盤。Amazonでは.jpや.com問わず1万円に近い値がついていることが多く、ヤフオクやフリマアプリに出ることもまず無い。しかもピンポイントでApple MusicやSpotifyにも無い。なんならYouTubeにも全曲は無い。以前オンラインの中古レコード屋で4000円ほどで売りに出されていましたが、すぐに買われていました。聴きたくても聴けない、そんなアルバムが2017年現在、存在しているんです。期待値だけが膨らむ。逆に、一生聴けない方が幸せなのかもしれない。

Flight Of The Blue Jay / Paul Motian and the Electric Bebop Band

 

Paul Motian (Dr)
Chris Cheek (Ts)
Chris Potter (Ts)
Brad Schoeppach (Gt)
Kurt Rosenwinkel (Gt)
Steve Swallow (B)

だから、代わりにこのアルバムをSpotifyで見つけてきました。妥協じゃないです、方向転換です。ちなみに「こんなメンツを集めてくるリーダーのポール・モチアンって一体誰なんだ?」という疑問もあるかと思いますが、ジャズ史上最も有名なアルバムと言っても過言ではない、ビル・エヴァンスPortrait In JazzWaltz For Debbyでドラムを演奏しているレジェンド中のレジェンドです。とんでもなくスゴい人なんです。

メンバーはReincarnation(略)からギターのウォルフガング・ムースピールがブラッド・シューパッチ(読み方合ってる?)に変わっただけ。誰なんでしょう。現在はBrad Shepik(ブラッド・シェピク)という名前に改名しているようです。ジャズミュージシャンは改名が好き。どうやらヨッケン・リュッカートのカルテットなどでも活動していたようですが、YouTubeで名前を検索してみると…

ムムム!見覚えのある髭のおじさん!

なんと、サックスはデイヴ・ピエトロさん。穐吉敏子オーケストラ、現在来日中のマリア・シュナイダー・オーケストラ等、木管楽器奏者として活躍中の大ベテランです。あのダニー・マッキャスリンの同僚ですよ。

実はピエトロさん、New York Tokyo Connection(通称NYTC)の一員として、2013年と2014年にウチの大学のジャズ研にクリニックという形で訪れています。メンバーは、日本を中心に活動されているピアニストのジョナサン・カッツさん、日本ベース界の重鎮である安ヵ川大樹さん、大野雄二・ルパンティック・ファイブなどで活躍されていたドラマーの江藤良人さん。僕は直接的な指導を受ける立場ではなかったのですが、モデルバンドを本場の言葉・音で指導していく姿に、かなりの刺激を受けました。ピエトロさんはマイク無しでも音が非常に大きい(しかも全然うるさくない)ので、「どうやったらそんなに大きな音で吹けるんですか?」と質問したら「とにかくホーンにエアを沢山送ることだよ。昔、穐吉敏子に『もっとデカい音で吹け!』と怒られ続けたんだ(笑)」と教えてくれました。

そんなNYTCですが、実は来週から日本ツアーが始まります!みんな、観に行くべし!必ず!

…完全に脱線している上、とんでもないステマみたいになってしまった。でも信じてください、これは偶然なんです。そのぐらい、ジャズの世界というのは横の繋がりが大きいということです。うーん。

で、肝心のアルバムはというと、編成ほど尖った印象を受けませんでした。寧ろ自然。2本のサックスとギターは左右に振り分けられていますので、テーマを完全にユニゾンしたり、ハモったり、掛け合いをやってもサウンドはスッキリ明快。全員が同じメロディーを演奏することもあるし、サックスとギターが1人ずつテーマを演奏し、残りの2人がオブリガートを演奏する等、パート分けも細かく決められています。こう見えて、意外と自由度の高い編成なのかもしれませんね。まだまだ開拓の余地がある、面白いジャンルなんじゃないかな。

チーク&ポッター、シューパッチ&ローゼンウィンケルはお互いに音色がそっくりなので、気を抜くとどれが誰なのか分からなくっちゃいます(笑) これは「わざと似たように演奏しろ」というポール・モチアンの指示があったのでしょうか。しかし、ジョシュア・レッドマンとマーク・ターナーの共演からも感じ取れるように、90'sのジャズメンは皆リアルタイムで切磋琢磨し、高みを目指し合ったライバル・仲間同士。互いに刺激を与え合っていたのですから、サウンドに共通点があるのは当然かもしれません。そういえば、ここに挙げた4人によるサックス四重奏、Axis Quartetなんてのがありましたね。

90年代~2000年代初頭では多く見られた彼らの共演も最近はほとんどないので、またどこかで機会があればやってほしいなぁ。

また脱線しちゃった。

アルバムの方ですが、1曲1曲が短いため、中だるみしないのも高ポイント。全11曲で49分、最も長い曲でも6分しかありません。ソリストたちもダラダラと演奏せず、キビっとした良いプレイをしてくれます。今どきのアルバムだと1曲で10分を超えることは珍しくないことですが、このぐらい引き締まった構成の方がリスナー的に取っつきやすいですね。(このブログも、もう少し短く分かりやすくならないものですかね…)

今でこそシーンの最前線でバリバリに活躍している個性豊かなジャズメン達ですが、ポール・モチアンという偉大なるメンターの前で修行している姿を知っておくのも良いのではないでしょうか。現代ジャズの夜明け前、若獅子たちが日夜行っていた膨大なセッションの、ほんの一部にですが触れることが出来る1枚でした。オススメです。