365日をJ棟で

サラリーマンの諸々日記。買い物、音楽、日常。

今年の愛聴盤② Aziza / Aziza

Aziza / Aziza

 

Dave Holland (B)

Chris Potter (Ss, Ts)

Lionel Loueke (Gt, Vo)

Eric Harland (Dr)

僕はクリス・ポッターが大好きです。高速のMoment's Noticeを余裕綽々で吹きまくる神童(なんと14歳!)は、その後マイケル・ブレッカーが確立した演奏スタイルを更に高いレベルへと持ち上げ、独自のクリス・ポッターサウンドを開拓。大量のフォロワーを生み出していきました。そんな僕もポッターの魅力に取り憑かれたサックスプレイヤーの1人です。


John Emche 5tet with Chris Potter - Moment's Notice - 1985

バカテクの持ち主ながら、バラードもスゴく上手い。サックスという楽器の可能性をグワッと押し広げたプレイヤーだと思います。90年代のリーダー作は派手さこそないものの、ジョシュア・レッドマン、マーク・ターナーらのアルバムと併せて聴くことで、当時のジャズメン達が新たなジャズを模索しまくっていた痕跡を発見できます。2010年代にリリースされたThe Sirens、Imaginary Citiesは「ECM=静か、音数が少ない、内省的」という僕の偏見を完全に吹き飛ばした傑作。静寂の中で燃え盛るポッターの炎に心を奪われました。どちらも愛聴盤です。

 

というわけで、大好きなポッターが参加しているだけで買いな本作ですが、昨年末に神戸の中古CD屋で衝動買いし、どエライ衝撃を受けたLive at The Monterey Jazz Festival 2007 / The Monterey Quartetとメンバーがほぼ同じ。ピアノのゴンザロ・ルバルカバがギターのリオネル・ルエケに代わっているだけ。期待しない訳がない!

 

Live at The Monterey Jazz Festival 2007 / The Monterey Quartet

ユニット名は無かったものの、Aziza自体は去年あたりから活動していたようで、ライブの模様を収めた映像もYouTubeに上がっています。ライブやリハーサルを通じてアンサンブルの完成度が高まった状態で録音されているであろう本作には当然、期待しまくりなわけです。

16/12/10 追記: バンド名の由来について、ホランドは本作に関するインタビューで以下のように述べています。

SPAZ: How did you decide on the band name Aziza?

DAVE: Before we toured last year we still hadn’t decided on a name for the band so we just used our four names to advertise the concerts. One of the songs we were playing was “Aziza Dance,” written by Lionel Loueke. I asked Lionel the meaning of Aziza and he explained that in his birthplace of Benin, Africa, the “Aziza” is believed to be a supernatural race of forest dwellers that give practical and spiritual advice. And so the name of the group was born.


Chris Potter, Dave Holland, Lionel Loueke, Eric Harland - Festival de Jazz de Vitoria Gasteiz 2015

 アルバム1曲目のAziza Danceは、エフェクトの掛かりまくったギターによる印象的なリフから始まります。「これホントにギターなの?実がクレイグ・テイボーンがシンセで弾いてました、なんてオチはないよね?」と思いながらも、続けて入ったハーランドのドラムにノックアウト。シンプルで明快なビートに開始早々ノリノリ。ソロは理解不能な事をやってるルエケ、イケイケドンなポッターの対比が面白く、最後にはハーランドがブチかまします。スタジオ録音の本作ですが、どの曲でもメンバーがそれぞれ十分な尺を使ってソロをしているのが素敵ですね。短い曲でも6分ほどあるので、スタジオ盤としてはそこそこボリューミーかも(10分超えの曲が7つもあるThe Epic / Kamasi Washingtonも凄いですが…)。

「1曲目に良曲を持ってきてるアルバムは竜頭蛇尾になる説」という持論があったりなかったりするのですが、2曲目のSummer 15は軽快な南国サウンドでウキウキ。ポッター、こういう曲も作れるんだ…The Sirensでのカリプソ感のないKalypsoとは何だったのか(Kalypsoはギリシャ神話に登場する女神に関する曲なので、カリプソ感はなくて当然ですが)。

3曲目のWalkin' The Walkではホランドが5拍子の上で長めのベースソロ。バンドの屋台骨としてどっしり支えるイメージのあるベーシストですが、やっぱりソロもカッコいい。モントレー・カルテットのMaidenでも、ピンと張り詰めた空気の中で非常に美しいベースソロを弾いています。

5曲目のBlue Sufiはちょっと沖縄っぽいモチーフが耳に残る変拍子曲。これもポッター作。ムムム、もしかしてポッター、民族音楽がマイブーム?確かTHE SAXのインタビューで新たなリーダー作を録音中と言っていましたが、どんな作風になるのか楽しみになってきました。このアルバムで最も長い曲(13分35秒)ですが、ポッター、ルエケ、ハーランドがこれでもかとアツいソロを披露しているので、中だるみもなく、むしろ体感時間はかなり短め。オススメの1曲です。

8曲目のSleepless Nightは、ジミヘン好きを公言しているルエケがディストーションとワウをかけて大暴れ!なんか救急車みたいな音鳴ってるし。触発されたポッターもフリークトーン、高速トリル等の特殊奏法で応えます。物凄いバトルですが、ホランドとハーランドはいたって冷静に12/8のリフを刻み続けているので、フリーになりすぎることもありません。その後はキメに合わせてハーランドがソロ。ライブ映像では、自由気ままにビートを崩しまくるハーランドに苦戦する3人の様子がかなり面白いです。


Chris Potter, Dave Holland, Lionel Loueke & Eric Harland - Vitoria-Gasteiz 2015 fragm.

本作は全体的にエスニックな香り(ルエケ色?)が強め。現代ジャズのド真ん中よりは少し外れた、ちょっとマニアックなサウンドに仕上がっています。4人が均等に2曲ずつ提供していますので、それだけルエケの存在が他のメンバーに多大な影響を及ぼしている、という風に考えられます。大好きなプレイヤーたちによる未知の化学反応に、最後まで興奮が止まりませんでした。聴くたびに新たな楽しみが見つかるので、来年以降も繰り返し聴いていくアルバムになりそうです。

Aziza名義で来日しないかなぁ、来てもコットンクラブやブルーノート東京だけだろうなぁ…