365日をJ棟で

サラリーマンの諸々日記。買い物、音楽、日常。

日記ちゃん。スナーキー・パピー。(2023/3/23)

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Snarky Puppy(スナーキー・パピー)の来日公演に行った。ビルボード大阪。

スナーキーはベーシストのマイケル・リーグが主宰する、音楽コレクティブ。名前を知った10年ぐらい前は「ジャズ+フュージョン+ファンク+アフロ+ダンス」みたいな触れ込みがされていたと思うが、多種多様なジャンルのアーティストともコラボを重ねた結果、今やワールドミュージック…いや、スナーキー・パピーという一大ジャンルとして君臨している。グラミー賞も4回獲っている。

 

スナーキーが流行るきっかけの一つとなったのは、間違いなく2014年の『We Like It Here』だろう。特に「What About Me?」「Lingus」の2曲はYouTubeで跳ねに跳ねた。クセになるリフと爽快感あるメロディーの「What About Me?」は、フュージョン少年だった私には天変地異級の衝撃だった。昨年のフジロックで来日していたコーリー・ヘンリーの名を世界に知らせたと言っても過言ではない「Lingus」も、いまだに聴くたび脳が熱くなり声が出るほどの快演だ。

ラーネル・ルイス(ドラム)の「緊急参加のため(ほぼ)ぶっつけ本番でレコーディング」というエピソードも相まった本作、バズるというワードは存在しなかった時代、スナーキーは明確にバズっていたのではないだろうか。(その前作『Family Dinner Vol.1』にて、ブレンダ・ラッセルの「Something」をカバーするレイラ・ハサウェイの特殊唱法がTwitterで非常に大きな話題となっていたが)

 

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今回は初期からのコアメンバーが中心で、編成としては小ぶり。

スナーキーにハマってから『Family Dinner Vol.2』『Culcha Vulcha』あたりまではCDを買っていたし、コピーバンドで「What About Me?」「Something」を演奏したりもした。メンバーであるボブ・レイノルズは存命のサックス奏者で最も憧れた1人で、2019年にサラ・ガザレクの来日公演で帯同した際には2セットを予約してボブ眼前の席に齧り付いたものだった。

ここ数年はスナーキーの活動は追いかけておらず、アルバムもApple Musicのライブラリに入れはするけど聴けていない状態。ヒップホップに傾倒したり、最近は国内のポップスに興味関心が向いていたり、お世辞にも熱心なスナーキーのリスナーとは言えない。実は今回の来日公演でセトリのメインだった『Empire State』もあまり聴き込まずにビルボードへ向かった。

 

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チケット販売開始日にスマホを連打し、首尾よく前から2テーブル目を予約できた。

とはいえ、私にとって初めて生で聴くスナーキーにはワクワクが止まらなかった。来日公演は基本的に東京近辺で、タイミングや金銭の兼ね合いで一度も観ることは叶っていなかった。

メンバーが入場し、生のマイケル・リーグだ!クリス・ブロックだ!ジェイ・イェニングスだ!マイク・マヒャーだ!クリス・マックイーンだ!ジャスティン・スタントンだ!と情報処理が追いつかない状態。

とにかく出音が良いバンドだった。世界中でおそらく1,000は優に超えるだろう回数のライブをこなしてきたバンドなので、場数によるオーディエンスの支配力やサウンドエンジニアリングが堅すぎる。それこそ数百回は演奏している曲でも初見のように集中し、互いの立ち回りに気を配って反応し合う点も世界トップランナーたる所以か。

なによりリーダーのマイケル・リーグはステージ中央から全メンバーに笑顔で視線を回し、インプロビゼーションの終わりも合図はしっかり出し、ベーシストとしてもリーダーとしてもバンドの屋台骨として機能していた。

 

Xavi、聴きたかったけど演らず。東京では演奏したのだとか?

長く待ちすぎたのか、実感が湧いていないのか、目の前で繰り広げられる最高級の演奏を前に叫び声を上げつつも、どこかポワァ〜っとしている自分がいた。アンコール前はあの「What About Me?」で、10年前の興奮と眼前の景色を行ったり来たりであまり記憶がない。

フジロックのコーリー・ウォンのように我を忘れて熱狂し倒す感じはなくて、感慨に溺れるような1時間半、よかったなぁ〜…と染み渡るコンサートだった。先日ジェイコブ・コリアーがDjesseシリーズを完結させたのと相まって、自分の青春時代を一旦は締め括る、そんな前向きな気持ちになれた。スナーキー・パピーよ、大阪に来てくれてありがとう。

(個人的にはフジロックに来てほしいタイプのアーティストではある。ヘブンで観たくないっすか?)

日記ちゃん。旅の終わりと始まり。(2023/3/3)

ジェイコブ・コリアーの"Djesse Vol.4"がリリースされた。

2018年より始まったDjesse(ジェシー)4部作の最終章。2019年にVol.2が、2021年にVol.3が、そして2024年に今作Vol.4が世に解き放たれた。

Vol.1はメトロポール・オルケストをフィーチャーした壮大なサウンドを、ジェイコブ本人が慣れ親しんだジャンルの音楽と共に。物語の始まりであり本人のシグネチャー的サウンドがふんだんに詰め込まれた"With the Love in My Heart"と、世界最高のアカペラグループTake 6を贅沢に使い込んだライオネル・リッチーの大ヒット曲"All Night Long"は必聴。

Vol.2はアコースティックなタッチ、気張らず聴けるも雄大な楽曲たち。なんといっても数百ものトラックを声だけで敷き詰めたアカペラの"Moon River"、そして鈴が鳴るようなギターとdodieの幻想的な歌声が美しいビートルズの"Here Comes The Sun"は是非ともデカい音で。

Vol.3は一転してエレクトリカル、本人が「内なる世界、電子の嵐、風邪の時に見る夢」とも説明するような目まぐるしさと妙なサイケさ。ダニエル・シーザーやトリー・ケリーなどポップミュージックの最先端を率いるアーティストをフィーチャーしたカジュアルな楽曲が多いこともあり、最も人気を博したアルバムなのでは。キャッチーで素直に良い曲だと感じる"All I Need"や、ライブでのシンガロングに適した(?)大団円の"Sleeping On My Dreams"はDjesse全シリーズを通してもトップクラスに好き。

 

Vol.4は、Vol.2,3のポップさにVol.1の空間的な広がりを足した上で、本人曰く「世界そのものを音楽とする」ためにはどうするか?というアイデアが結実したアルバム。

ジョン・レジェンド、トリー・ケリー、イエバの三傑をフィーチャーしたサイモン&ガーファンクルの"Bridge Over Troubled Water"、近ごろ勢いがヤバい韓国のaespaにColdplayのクリス・マーティンを共演させたK-POP+ラップ+ゴスペル+フューチャーベースな"Over You"、カーク・フランクリン御一行のゴスペルに南ア出身ラッパーであるショー・マジョジの凄まじいフローを足し算した"Box Of Stars Pt.1"など、よりスタイルや国籍を問わない、雑な表現をするなら「なんでもあり!」な世界観を心地よい、ノリノリの音楽でまとめ上げている。

"Box Of Stars"ではVol.1の"Overture"の旋律が繰り返し登場し、バックがアフリカのリズムに変化することで今まで「なんとなくクラシックっぽい」と思っていた箇所が途端にアフリカっぽい旋律に聴こえてくるのだから不思議。「僕らが思っているよりか世界は一つだよ、ほら」ということを聴覚を使って直接伝えられたような手触りがして、うわーっ!と鳥肌が立った。(最初期作の"Don't You Worry 'Bout A Thing"のベースが少しだけ登場する部分で何故か涙が出てきた)

 

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また「世界そのものを音楽とする」きっかけでもあった、全世界をツアーする中でジェイコブが聴衆との交流で生み出したコーラス、実に10万を超える人々の声からサンプリングしたサウンドがほぼ全楽曲に散りばめられている。1曲目の"100,000 Voices"からいきなり圧倒される程の音圧。

私も2022年11月の大阪公演(奇跡的に最前列を取れた)に行き、ジェイコブと束の間の交流を果たした身。0.1ミクロンぐらいでも、このVol.4にも自分の声が入っているかもしれない。ライブ盤だと可能性はあっても、スタジオ盤に自分の声が乗るのは不思議な感覚。


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ロンドンの小さな部屋から1人の少年が生み出した音楽が、ポップミュージックの世界を根本からひっくり返した。ボーカル、ピアノ、ギター、ベース、打楽器からレコーディングにミックスまで、なんでも出来るアーティストとしてデビュー作の"In My Room"を作り上げた孤高の鬼才が、"Djesse"シリーズで世界中のミュージシャン達と共に作品を作り上げ、そして最後は世界中のファン達の声(まさに"100,000 Voices")に行き着いた。まるで一編の物語を読んでいるかのような6年間だった。Vol.4、そしてDjesseのラストを飾る"World O World"は、聖堂にいるかのようなクワイアのみで構成され、美しきトライアド(ドミソ)と共にこう閉じる。

また会う時まで

さようなら さようなら

長年に渡る超大作のエンドロールを眺めた後の気分。寂しくもあり、充実感もあり。このスペクタクルを自分で咀嚼し切れていない興奮もあり。ジェイコブ・コリアーの音楽制作はまだまだ続くが、Djesseシリーズは一旦ここでお終い。

Vol.1の衝撃から6年間、大学生活を終えたり、働き始めたり、妻と出会ったり、休職したり、結婚したり、色んな体験をしたり。人生のフェーズでもかなり密度の高い時間だった分、このシリーズが残す影響もとてつもなく大きく、それゆえ終わってしまうことにしんみりしてしまう。

それでも人生は続いてゆく。ジェイコブ君だってリリースに際し「Djesseは終わり、また果てしない旅が始まる」と述べている。まだまだ生き抜いていこうよ。

 

Djesse Vol. 4

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Djesse Vol.1

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Djesse Vol. 2

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ジェシー Vol. 3

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TOMOO "TWO MOON" Live Tour 2023-2024@フェスティバルホール大阪

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少し時間は経ったけれど、新年一発目のライブはTOMOOでした。ともお。

一昨年、出張先の山形で線状降水帯に襲われ、あり得ない豪雨に打たれながらタクシーで飛び込んだコンビニ。夕飯を買いつつ、有線で掛かっていたメジャー1stシングルの"オセロ"に出会った。

 

いわゆるドゥービー・ブラザーズの"What A Fool Believes"構文の亜種…と勝手に呼んでいる、特定のコードを軽快なリズムで行き来するビートに、男女どちらとも言えない中性的なミドルボイス。

豪雨のせいで、いっそう音が際立つ店内。その場でShazamするほどの一聴き惚れだった。(コンビニの中ではMrs.GREEN APPLEの大森さんやOfficial髭男ismの藤原さんのような、ハイトーンが得意な男性歌手だと勘違いしていた)

 

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その少し後、心斎橋JANUSにおけるTOMOO/ステレオガール/Cody・Lee(李)の合同イベントで目撃してから一層ファンとなり、新旧曲を追い続けていた。(関係ないが、この日のステレオガールは衝撃的だった)

そして昨年下期、満を辞した1stフルアルバムの"TWO MOON"がリリース。

正直なところ、今年は新譜をほとんど追わなくなり、好きな曲だけをグルグルとリピートする日々。我ながら保守的なフェーズに入ってしもうたなと思っていたが、10月以降にその傾向がより顕著となってしまった。このアルバムばかり聴いていたから。

 

"槍出せ角出せはいらない 丸いままつらぬいて"

楽曲のアイデアはあるんだけど、脳内の景色を描くようなサウンドプロダクションが出来ない…という歯痒さを解消するうえで、メジャーデビューはとても大きな意味があるのではないかと思う。業界のことは何も知らないけれど、予算とかスタジオとかプロデューサーとかバックミュージシャンとか…

メジャーデビュー以降の楽曲は、どれも充実度とリッチ感がインディーズ時代と比べて桁違いに良く聴こえる。特にオープナーの"Super Ball"は小西遼(象眠舎, CRCK/LCKS etc.)をプロデュースに迎え、錚々たるメンバーのホーンセクションとストリングスをフルパワーで掻き鳴らしつつ、自身の素直な気持ちを真っ直ぐに表した(とMCで語っていた)ウルトラ・ポップなナンバー。

私としては星野源の"アイデア"やジェイコブ・コリアーの"With the Love in My Heart"を聴いた時の衝撃に近い。これまでアーティストが描き続けてきたサウンドの集大成、第一章のハイライトであり第二章の幕開けを告げる予告編でもある、巨大な音楽建築。とてもヤバい曲。気に入ったとかのレベルじゃなくて、なんかもう文句なしのオープナーをぶつけられると即名盤認定しちゃうよな。

 

高木祥太(BREIMEN)をプロデューサーに迎えた"Cinderella"。2サビ「変われないままの私を許してさ」のIV→V/IVは私の大好物。先述の"Super Ball"も同じ進行が登場する。

コンサートにおけるTOMOOは、ステージ上を踊り回りながら歌うスタイル、電子ピアノで弾き語るバンドスタイル、グランドピアノで独唱(orバンド演奏)するスタイル、それぞれバランス良く配置され、耳も目も飽きが来ない2時間だった。

楽曲はCD音源がベースで、極端なアレンジはされずに尺通りに進むのがほとんど。尻上がりな曲調が多い割に、TENDREやカネコアヤノのようにオープンな小節を設けてバンドメンバーにソロを取らせる機会は少なく、大サビやアウトロのボルテージが上がってきたタイミングで曲がスパッと切れてしまうので「もっと頼む!」と惜しく思う場面も多かった。

いや、ある意味それもポップシンガー・TOMOOのスタイルなのかも。なんでも器用にやる必要はないし、インプロ中心で演出を過剰にしなくたっていい。良いメロディーでさえあれば飽きずに何度でも聴ける、メロディーメイカーってそういうもんじゃん。

 

(TOMOOの歌は菊地成孔の箸の手を止めるだろうか?)

終演後は友人と立ち食い寿司をつまみつつ、あの曲が好きだ、最近はTWO MOONしか聴いていない、ほんまそれ、みたいな与太話をしていた。

その中で、TOMOOのJ-POPにおける最終的な立ち位置はどこになるだろう?と尋ねた。友人はaikoかな、アンジェラ・アキを感じる部分もあったなと回答した。奇遇やな、私も全く同じ感想だった。

ピアノの弾き語りというイメージが先行するのか、ギター片手のあいみょんや声量で圧倒する越智志帆(Superfly)ではないよなとか、色々考えた結果として着地するaiko。アンジェラ・アキの雰囲気は完全にTWO MOON収録の"窓"に引っ張られていると思う。

スタイルといえば。"Grapefruit Moon"のブリッジ部(這って 這って〜)や"Cinderella"のサビ(君はもう誰かに出会って 新しいコートが似合ってるよ)で聴ける地声とファルセットを上下に行き来する歌唱スタイルは、原雅明さんの著者"Jazz Thing ジャズという何か"で紹介されていた、かつてはある種の音楽における素っ頓狂なリズムと音程の跳躍を「ファンキー」と形容していた…みたいな一節(記憶違いならメンゴ)を思い出した。ヒョコヒョコ跳ねたりウネウネ捩らせたり、フリースタイルなダンスも照らし合わせるとTOMOOは紛れもないファンクアーティストと呼べるが、はてさて…え?なんの話これ?

 

しかしEarth, Wind & Fireに対するTower Of Power、THE BEATLESに対するTHE BEACH BOYS、マイケル・ジャクソンに対するプリンス、ももいろクローバー(Z)に対する東京女子流のように、サザンオールスターズに対するスターダスト★レビューというポジショニングがあるように感じている。(適切な並びかはさておき、あくまでも個人的な印象です)

あとはどうだろう、スターダスト★レビューの感想でも述べたことだけど、TOMOOという名前が"お茶の間レベル"まで届くだろうかというところ。

昨夜放送の関ジャムでも、いしわたり淳治さんが"Super Ball"を1位、蔦谷好位置さんが"Grapefruit Moon"を2位として2023年のベスト楽曲に選出している。関ジャムを観るような「それなりに音楽好き」の層には十分リーチしていそう。

今後は大型フェスや地上波に出るだろうし、タイアップ次第では紅白にも出れるポテンシャルを感じる。ネクスト○○というのは多方面に失礼な響きで好かないが、音楽性ではなく世間への浸透度の面で、TOMOOがaikoのように世代を代表するアーティストになるんじゃないかと、どこかで期待している自分がいる。

なんて妄想はさておき。2024年もTOMOOは唯一無二の声でもって、数多の人を魅了するんだろうなと思ったコンサートでした。ゴーゴーレッツゴー!

日記ちゃん。スタレビ。(2023/11/27)

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フジロックぶりのスターダスト★レビュー、というかフジロックぶりのコンサート鑑賞。

ひょんなこと、というか大きなトラブルから行くことに。元々は母が2人の伯(叔)母と行く予定にしていたが、直前に叔母が怪我してしまったことで参加が難しくなった。叔母は今回の"ブギウギ ワンダー★レビュー"ツアーに何公演も遠征している根っからのスタレビファンであり、私もフジロックの後にもLINEで感想を送って単独公演も興味がある旨を伝えていたので白羽の矢が立った次第。

スタレビといえば「夢伝説」「今夜だけきっと」「木蘭の涙」に馴染みある方が多いかと思う。現に私もその3曲しか知らずにフジロックに行ったし、今回もライブアルバムをザッとなぞったぐらい。ご本人たちも「ヒットソングがございませんので」と自虐するほどだが、40年もメジャーシーンに居続けられるのは簡単なことではないよね。

パフォーマンスは素晴らしいと呼ぶほかなく、70〜80年代のバンドブームで一握りのメジャーデビューを掴んだことだけあって、本当に、本当に演奏も歌唱もレベルが高い。現在は正メンバー3人、サポート2人で活動している。(4人目の正メンバーであるパーカッションの林"VOH"紀勝さんは闘病のため今回のツアーはお休み)

バンド全員が色んな楽器(ボーカル)を取れる強みというのはTENDREのバンドセットを観た際に強調したことではあるが、スタレビはVo.根本さんを除く4人も"ちょい歌い"のレベルではないほど複雑かつ美麗なコーラスワークをこなしていた。なんだったらオープニングは5人全員が前に出てマイクを握るドゥーワップのスタイルで始まるぐらいには、ピュアなボーカルグループだ。途中、ザ・モンキーズとザ・タイマーズ(忌野清志郎)の両グループに敬意を表した"デイドリーム・ビリーバー"のアカペラカバーは圧巻だった。

バンド名がジャズスタンダードの"Stella By Starlight"から取られていたことはつい最近知ったが、やはり世代が世代なこともあって根本さんの根底にはジャズやブルース、モータウンやツアータイトルの"ブギウギ"があるのだと染み入った。それらのテイストをJ-POPとロックが上手いことミックスしたスタイルに落とし込み、スタレビならではのスパイス(主にギャグ)を足した、どこにも存在しないサウンドになっていた。強いて言うなら3時間半の公演のうち1時間は喋ってたぐらいには、ギャグ要素が多いかもしれないけれど…

根本さんも「40年もやってると、みんなからレジェンドだって言われたりするもんだろ。小田和正さんも、松任谷由美さんもレジェンドだ。でも俺たちは決してそうは呼ばれないんだよ。なんでかって、笑いを取りに行っちゃうからなのよね」と半ば悔しそうに言うが、確実にレジェンドへ両足から突っ込んでいるバンドでしょう。

 

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幕間の休憩もステージ脇に捌けず、延々トークをしているという不思議な空間。

ベテランアーティスト故、当然のごとく観客もベテランな方が多い。30歳である私の両親世代が中心で、叔母のように長年追い掛けている人が多い。曲中のコール&レスポンスや手拍子のタイミングは完璧で、1,500人ちょっとの会場が一体となって大盛り上がり。

とりわけ興味深かったのは、普段のツアーではあまり演奏しないシングル曲やアルバムの埋もれた楽曲たちをメンバーの選曲で演りますコーナー。長年ファンをやっていると「そこまで知名度は高くないけど、私は好きだ」という曲、一つや二つあるかと思う。そういうナンバーを拾ってくれるのは楽しいだろうし、実際観客の反応も大きかった。しかも公演ごとにセットリストが日替わりで異なるという、長年の活動による潤沢な楽曲数/数百数千に上るライブ経験があるからこそ成し遂げられる業だった。(ライブを通して譜面も全く見ていなかった)

先述の"夢物語"と"今夜だけきっと"のような、大衆にも届いた十八番は箸休め的なインターバルとして挟まれており、それほど会場が盛り上がらなかったのは逆に面白かった。ただ、"木蘭の涙"は先日亡くなったKANさんへ捧ぐという想いもあり、ステージも客席も哀しみと温かさ、その両方に包まれていた。

そんなこともあって、私のような新規ファンにはちょっとハードルの高い現場だなとは思いつつも存分に楽しんだ。

 

デビュー年こそ違えど、年齢層は近いのでは。

ふと考えるのが、スタレビの知名度と評価。ヒット曲は持っているが、いわゆるスマッシュヒットがなくオーバーグラウンドにあまり出てこない存在と認識している。実力は有り余るほどあるし、実際強く評価する声も多いバンドではある。

しかしEarth, Wind & Fireに対するTower Of Power、THE BEATLESに対するTHE BEACH BOYS、マイケル・ジャクソンに対するプリンス、ももいろクローバー(Z)に対する東京女子流のように、サザンオールスターズに対するスターダスト★レビューというポジショニングがあるように感じている。(適切な並びかはさておき、あくまでも個人的な印象です)

いわば「音楽にそれほど興味がない人でも知っているアーティスト」と「音楽が好きだと公言している人でさえ嗜好の範囲が被らなければ知らない可能性すらあるアーティスト」の区分けがあり、その間に大きな壁があると感じる。もちろん、後者はそのジャンルを少し齧り始めれば真っ先に出くわす代表的なアーティスト達でもあるのだが。

 

要は歯痒いのである。サザンは評価されすぎている!と言うつもりは一切、本当に毛頭もなく、スタレビが評価されなさすぎてないか?の方である。私もサザン大好きだし。もはやギャグ度の違いか…?と思うも、マンピーのG★SPOTなんて歌ってるサザンのカマし方も相当なものでして。

とはいえ、これはもう時流やらタイミングやらなんやらの次元だと思うし、そもそも私が生まれる遥か前から活動しているバンドが当時どのように評価されていたかなんて、人から見聞きするだけでは掴みきれない。

スタレビが紅白に出てドラマの主題歌やって…みたいな世界線はどこかにあったとは思うが、どうこう言っても仕方ない。今、応援したいと思ったならそうするだけ。解散後や死後に「やっぱりスゴかったんだ!」などと持ち上げることは私にとって、とんでもなく空虚である。好きなアーティストは精一杯応援し続けたい。

 

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寿司うま〜。

そんなこんなでスタレビのツアーはまだまだ2024年の春まで続くようなので、健康長寿でまだまだ皆に元気を振る舞ってほしいと願っております。

ポップミュージックにおけるエンターテイメントの究極形、その一つだったな〜。

 

 

 

 

日記ちゃん。ザ・イントロ。(2023/6/6)

 

浪人していた時期から大学の中盤まで、東京女子流(TGS)というガールズグループにハマっていた。イベントに行って握手したり写真を撮ったりする程度の、ライトな在宅オタクではあったが。

TGSは、有り体に言えば楽曲派、それも80〜90sのスタジオサウンド好きを狙い撃ったコアな音楽性で人気を博していた。初期は松井寛a.k.a.Royal Mirrorballさんを作編曲の中心に、ライブは土方隆行さんや渡嘉敷祐一さん等のベテランをバックに据えていた。油絵的に発色の強いサウンド。T-SQUARE生まれフュージョン育ちだった私がハマるのは一瞬である。

2015年くらい、メンバーの脱退もある中で、アイドル→アーティストへの大胆な路線変更を明言した。あえてアイドルフェスの出演も控え、言ってしまえば楽曲派おじさんを切ってファンの平均年齢層を下げにかかる、より淡さを求めたエレクトリックなサウンドに変貌した。当時の私は中々ハマりきれずフェードアウトしたので、その舵切りが成功だったかは分からないんだけど、とりあえず新譜は追わなくなっていた。2019年のミニライブイベントで握手&写真会に参加したぐらいかな。その辺りになるとアイドルフェスにも再び参加するようになっていて、サウンドもスタジオ方面とエレクトリック方面の折衷案を模索しているような、朧げだが少しずつ前進している印象があった。

月日は流れ、デビュー時は中高生だったメンバーも20代半ば。かつては大学生だった私もアラサーである。はて、今のTGSは如何に?と検索をかけると、昨年に6枚目のフルアルバム"ノクターナル"をリリースしていた。

 

ノクターナル

ノクターナル

  • 東京女子流
  • J-Pop
  • ¥2241

TGSによる全曲解説、必見である。

私の興味を引いたのが、1曲目に踊る"Intro"の文字。TGSのアルバムは1st〜4thまで、"Intro"に始まり"Outro"で終わるという法則があった。更に新作の"Intro"は前作の"Outro"を踏襲したアレンジになっているという憎い演出も。4年間に渡って連綿と続いたシリーズ盤であり、そして恐ろしいほど楽曲の完成度が高い。アルバム単位で語れる、一つとしてスキップが出来ない究極のマスターピースたち。個人的にはビートルズの"Sgt. Pepper's〜"と"Magical〜"、ATCQの2ndと3rdぐらい比較が難しい。4枚というボリュームは、完結編の製作も待ち遠しいジェイコブ・コリアーの"Djesse"とも(私の中で)並び称される。

話は逸れたが、アーティスト宣言後に方向性を変えた5thは"Intro"システムを排していたため、今回の6thは再生ボタンを押す前から「原点回帰」を予感させていた。大人となった今のTGSなら、4thまでの方向性をブラッシュアップさせたうえでピタッとハマれるのではなかろうかと。

 

う〜わ、おじさんテンション上がっちゃったよ。1分49秒、足りない想像力がありったけに爆発。

ハコは大阪の心斎橋BIGCAT、デカくてもなんばHatchぐらい。東京ならO-EASTぐらいか?行ったことないけど。ライブハウスの開演時間、できれば19時が良い。場内BGMと照明がスッと落ちる。待ち切れない観客たちの歓声と拍手、刹那の静寂の後に鳴り始めるSE。ハンドクラップに合わせたライトの明滅、黄色味の強い逆光、先に入場するバックバンド、片手にはストローの刺さったペットボトル、思いのほか重低音が強くて揺れる下腹部、ギタリストがヘッドに付けたチューナーの光、1:10あたりから音源とバンドサウンドがクロスオーバーしてもカッコいい。遅れて入ってくるメインアーティスト、演者同士の目配せ、そして上がる幕。

要約すると、この"Intro"からはライブにおけるイントロSEとして、たまらない良さを感じた。TGSに限らず、好きなアーティストのプレイリストの冒頭に置くと途端にワンマンライブのオープニングに変化させられる。任意のタイミングで歓声のSEが出せるアプリが欲しい。

それはさておき、繋がった2曲目の"Viva La 恋心"も出色の出来。ライブになぞらえると、アーティストが同じ空間にいるという興奮に脳が追い付いていなくて、まだフワフワしている時間の楽曲。パフォーマンスはもちろん楽しみたいけれど、今日のメンバーのファッションが、バンドの機材が、お客さんの数が、と情報に目移りしている。演者も滑り出しなので、いきなりキラーチューン・代表曲では双方の血圧が上がって竜頭蛇尾になりかねない。そのスキマを埋める楽曲としてのミドルアップなメロウチューン、これ以上ないオープナーだと思う。

 

屋内のライブハウスなら先述の入り方が個人的に好きだけれど、オープンエアーな野外フェスなら5曲目の"コーナーカット・メモリーズ"をオープナーに配置しても良さそう。往年のカタいスタジオサウンドを解した、とても余裕のある(でもテンションは上がる)ダンスナンバー。このアルバムを聴く前の「4thまでの方向性をブラッシュアップさせた」という期待がドンピシャ。もう一度、東京女子流にハマっている自分がいるぞ。

 

思い出したのは、2014年ぐらいに西北ガーデンズでフリーライブイベントがあって、そのオープナーが3rdの"ふたりきり"だった。初めて聴く曲で、めちゃくちゃ衝撃を受けた。サウンドめっちゃ良いし、めっちゃアイドルだし。新井ひとみさん、結構ビジュアルで印象に残ってる人も多いと思うんだけど、1人だけコンプレッサーとオートチューンかけてるんかってぐらい歌が上手いんですよ。個人的なアイドル7不思議の一つ。

その後の握手会、推しの中江友梨さんの後ろには新井ひとみさんが待ち構えていて、あまりのビジュアルと緊張に「あっ………あっ、可愛いですね…」としか言えなかった。キッモ。